忘れられた人々

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

「アンダルシアの犬」「黄金時代」などで知られるシュルレアリスム映画の巨匠ルイス・ブニュエルのメキシコ時代を代表する作品。悪行に手を染める少年たちの生態を描き、1951年・第4回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。大都会メキシコシティのスラム街。感化院を脱走した少年ハイボは、街の不良少年たちのボスに返り咲く。ハイボは自分が感化院に送られたのはジュリアンの密告のせいだと知り、密かに復讐を誓う。ハイボ率いる不良少年たちは盲目の音楽師を襲ったり盗みを働いたりと悪行を繰り返し、仲間の1人であるペドロは罪悪感に苛まれるが……。2003年にはユネスコの「世界の記憶」に登録された。

1950年製作/81分/メキシコ
原題:Los Olvidados
配給:パールハウス
劇場公開日:1953年8月11日

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映画レビュー

4.5忘れられた人々=私たちがみなくなった人々

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

戦争が忘れられない50年代の人々の現実。スラム街に生きる子どもは教育もまともに受けられず、親からの愛はもらえないし、そもそも親がいないことだってある。だから幼くして働きに出なくてはいけないし、家事労働もしなくてはいけない。不良になることだってある。けれど彼らは可哀想なだけではない。盲目の老人や足がない男を襲って、金銭や荷物を強奪することだってあるのだから。弱き者がさらに弱き者に酷い仕打ちを与える。単純に愛と信頼は存在しない。普遍的な悪の事象だ。

盲目の老人は目が見えないが、現実がよく見えているし、ペドロは〈事件〉を見たが見ないふりをしたから、幻想/夢が見える。母や所長、ハイボはペドロのことをちゃんと見ていない。だからペドロが悪を取り払い善良になる物語と思える。
しかし上述の図式はあまりにも単純だ。老人に悪人の要素はあるし、ペドロが悪から逃れる行動は、彼をどんどん悪に染めていく。母やハイボに更生/更正の余地はない。単純な図式に当てはめようとすればするほど、本作をちゃんと見ていないことを宣告されているようだ。
誰しもに悪の要素がある。陳腐な相対主義に還元されそうで危ういが、ゴミ山に打ち捨てられることで徹底される。まず残酷さをみよ、と。

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