劇場公開日 1955年8月14日

「お一人様の貴女にこそ観て欲しい」旅情(1955) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5お一人様の貴女にこそ観て欲しい

2018年8月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

美しいベニスを美しい撮影であたかも旅行に行ってきたかの様にたっぷりと堪能しました

主人公はキャサリンヘップバーンの本作出演時の年齢と同じとしたら43歳

スタイルもいいし、着ている服もセンス良く素敵です
サンマルコ広場のオーブンカフェで伸ばした足と耳からうなじのラインを後ろから見とれるレナートの視線の通り、なんといい女なんだと感嘆する
まだまだイケてる女性
なんで私を男が選ばないのかわからない

でも冷静にみればやっぱり年増、声もオバサン
小学生くらいの子供と歩けば母親に見える
酒は強いし、気も強い
仕事はできるし、稼ぎもあるから
独りで生きていく自信ももちろんある

それでも心は乙女のまま、ピュアで可愛らしくいじらしい

ペンションの女主人が言うように、ロマンスは積極性がなければつかめはしません
仕事が忙し過ぎてなんて事は言い訳で
貴女に欠けていたのはそれでは無いのですか?
実らない恋の経験値だけが高くて無駄にガードが固すぎなのでは無いですか?

それで結局、貴女は心が震えるようなロマンスを一度でも貴女は経験しているのですか?

もしないのなら、つかみに行くべきです
それをもたぬまま夕陽を迎えてしまうのですか?
人生の夏が終わる前につかみとるべきです
それを糧に貴女はこれからの人生を強く生きれるはずです。
その思い出が貴女の心をあの美しいベニスの光景のように彩ってくれるはずです

もしもそのロマンスをつかむことなく帰国していたなら、その後の貴女の人生は何色で暮らしていくというのでしょうか?

デビットリーン監督の細やかな演出、美しい映像
花火の夜の思い出、朝帰りの晴れやかで誇らしげな顔は素晴らしいシーンでした

実ることの無い恋は主人公のようにズルズル引きずらずに見切るべきです
けれども心が震えた生きたあかしは彼女の思い出のようにお金では買えない一生の財産になるのです

この映画は一歩踏み出す勇気をそんな貴女に与えてくれると思います

あき240