旅情(1955)

劇場公開日:

旅情(1955)

解説

ブロードウェイでヒットしたアーサー・ローレンツの戯曲『カッコー鳥の時節』から「ホブスンの婿選び」のデイヴィッド・リーンがヴェニスにロケイションして監督した一九五五年度作品。脚色はデイヴィッド・リーンと小説家のH・E・ベイツが協力して行った。テクニカラー色彩の撮影は「ホブスンの婿選び」のジャック・ヒルドヤード、音楽は「パンと恋と夢」のアレッサンドロ・チコニーニである。主演は「アフリカの女王」のキャサリン・ヘップバーンで、「愛の泉」のロッサノ・ブラッツィが共演、ほか「怪僧ラスプーチン」のイザ・ミランダ、ダレン・マッガヴィン、「裸足の伯爵夫人」のマリ・アルドン、「黒い骰子」のマクドナルド・パーク、ジェーン・ローズ、ガイタノ・アウディエロ、アンドレ・モレルなどが助演する。

1955年製作/100分/PG12/イギリス
原題:Summertime
配給:UA=松竹
劇場公開日:1955年8月14日

ストーリー

アメリカの地方都市で秘書をしていた三十八歳のジェイン・ハドスン(キャサリン・ヘップバーン)は、欧洲見物の夢を実現し、ヴェニスまでやって来た。フィオリナ夫人(イザ・ミランダ)の経営するホテルに落着いた彼女は、相手もなくたった一人で見物に出かけ、サン・マルコ広場に来て、喫茶店のテイブルに腰を下した。しかし、背後からじっと彼女をみつめる中年の男(ロッサノ・ブラッツィ)に気づくと、あたふたとそこを去るのであった。翌日、彼女は浮浪児マウロの案内で名所見物をして歩いた。通りすがりの骨董店に入ると、そこの主人は昨日サン・マルコ広場で会った男だった。うろたえた彼女は十八世紀の品だというゴブレットを買い、そうそうに店を出た。その日の夕方、ジェインはまたサン・マルコ広場へ行った。例の男も来たが、彼女に先約があると感ちがいし、会釈して去って行った。翌日、彼女はまた骨董店へ行ったが、十七八の青年から主人は留守だといわれた。ジェインはこの店を記念に16ミリ・キャメラに収めようとして運河に落ち、みじめな恰好でホテルへ帰った。骨董店の主人レナートは、その彼女のホテルを訪れ、夜、広場で会おうと約束した。その夜の広場でジェインは初めて幸福感に浸り、思い出にくちなしの花を買った。別れるとき、レナートは彼女に接吻し、明夜八時に会う約束をした。翌日、彼女は美しく装って広場へ出かけたが、彼の店にいた青年がやって来て、彼が用事でおそくなることを告げた。青年がレナートの息子であることを聞いたジェインは、妻もいると知って失望し、広場を去った。ホテルへ追って来たレナートは妻とは別居しているといい、男女が愛し合うのに理屈をつけることはないと強くいった。ジェインはその夜、レナートと夢のような夜を過した。そしてそれから数日間、二人はブラノの漁村で楽しい日を送った。ヴェニスへ戻ったジェインは、このまま別れられなくなりそうな自分の気持を恐れ、急に旅立つことにきめた。発車のベルがなったときかけつけたレナートの手にはくちなしの花が握られていた。プラットフォームに立ちつくすレナートに、ジェインはいつまでも手をふりつづけた。

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映画レビュー

5.0最高傑作

2023年6月1日
スマートフォンから投稿

歳をとって経験を積まなければわからない映画。全てのシーンが美しく、せつない。川、ゴンドラ、影、空、花、花火、映像で物語を語る。悲しいけどこれでよかったと笑顔のラストシーン。セリフやシークエンスに頼らない。映画が最高の表現手段だった時代の最高傑作の一つ。文句無く星5点。

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ブロディー署長

3.0イタリアで買い物するときは値切らなければならない

2021年8月28日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 キャサリン・ヘプバーンがビデオで風景撮影をしているとき運河に落ちてしまうが、見事なタイミングでカメラだけを取る少年マーロがニクい!

 結局、ジェーンは恋愛を楽しむということを学んだのだろうか。ひと夏の恋、ひと夏のアバンチュール。オールドミスだけに心情は手に取るようにわかるけど、最近のセックスだけを楽しむために旅行するのもこの映画の影響なのだろうか・・・

 ラストシーンの列車を追いかけるレナードと、受取ろうとして受け取れないジェーン。何度見ても印象に残るなぁ・・・運河に落ちるシーンのほうが好きだけど・・・

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kossy

4.0名女優キャサリン・ヘプバーンの中期の代表作

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

映画が観客に夢を与えることが一般的だった1950年代の恋愛映画の名作。「逢びき」「大いなる遺産」のデーヴィット・リーン監督のハリウッドデビュー作。38歳の独身女性が念願のヨーロッパ旅行をする現実味は、当時のアメリカでも薄かったと想像します。20年掛けて贅沢せずお金を貯めたなら、それはそれで設定に無理はないのでしょう。
水の都ベニスの風光明媚な舞台で、イタリアの伊達男から熱烈に口説かれる中年女性のよろめき。この陳腐と云える物語をただの娯楽作品にしないで、説得力のあるドラマにした要因は、ひとえにヘプバーンの存在とリーンの演出にあることは明白です。男性に頼らない自立した女性像を私生活含めて実現したバックボーンと知性と演劇芝居の高度な演技力。唯一の弱みは設定年齢より10歳超えるヘプバーンの顔の皺です。元来白人女性は皮膚が薄く、ヘプバーンもその例にもれません。実際リーン監督は撮影秘話のなかでヘプバーンの皺を隠すのに苦労したと淀川長治氏に語っています。しかし、そんなことも、ラストの別れの場面の余韻で忘れてしまいます。爽快感と満足感を与える映画史に残る名ラストシーンです。
リーン監督は、この映画の成功でハリウッド資本による商業映画と芸術映画のバランスの良い大作を連続して大ヒットさせます。「アラビアのロレンス」「ドクトルジバゴ」「ライアンの娘」など、今ではだれにも作れない遺産になりました。

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Gustav

4.5お一人様の貴女にこそ観て欲しい

2018年8月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

美しいベニスを美しい撮影であたかも旅行に行ってきたかの様にたっぷりと堪能しました

主人公はキャサリンヘップバーンの本作出演時の年齢と同じとしたら43歳

スタイルもいいし、着ている服もセンス良く素敵です
サンマルコ広場のオーブンカフェで伸ばした足と耳からうなじのラインを後ろから見とれるレナートの視線の通り、なんといい女なんだと感嘆する
まだまだイケてる女性
なんで私を男が選ばないのかわからない

でも冷静にみればやっぱり年増、声もオバサン
小学生くらいの子供と歩けば母親に見える
酒は強いし、気も強い
仕事はできるし、稼ぎもあるから
独りで生きていく自信ももちろんある

それでも心は乙女のまま、ピュアで可愛らしくいじらしい

ペンションの女主人が言うように、ロマンスは積極性がなければつかめはしません
仕事が忙し過ぎてなんて事は言い訳で
貴女に欠けていたのはそれでは無いのですか?
実らない恋の経験値だけが高くて無駄にガードが固すぎなのでは無いですか?

それで結局、貴女は心が震えるようなロマンスを一度でも貴女は経験しているのですか?

もしないのなら、つかみに行くべきです
それをもたぬまま夕陽を迎えてしまうのですか?
人生の夏が終わる前につかみとるべきです
それを糧に貴女はこれからの人生を強く生きれるはずです。
その思い出が貴女の心をあの美しいベニスの光景のように彩ってくれるはずです

もしもそのロマンスをつかむことなく帰国していたなら、その後の貴女の人生は何色で暮らしていくというのでしょうか?

デビットリーン監督の細やかな演出、美しい映像
花火の夜の思い出、朝帰りの晴れやかで誇らしげな顔は素晴らしいシーンでした

実ることの無い恋は主人公のようにズルズル引きずらずに見切るべきです
けれども心が震えた生きたあかしは彼女の思い出のようにお金では買えない一生の財産になるのです

この映画は一歩踏み出す勇気をそんな貴女に与えてくれると思います

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