劇場公開日 1978年2月25日

「未知のものへの恐れと好奇心」未知との遭遇 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0未知のものへの恐れと好奇心

2018年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

萌える

マザーシップ他、今となっては他の映画にも転用されていて、SF=アドベンチャーと思っている人には使い古されたネタばかりかもしれない。

けれど、未知のものへの好奇心と恐れを伴いつつも、なんとかコミュニケーションを取ろうとする緊迫感がリアル、圧巻。自分が今ここで未知なるものと遭遇している気になってくる。荘厳で神聖にすら感じる。

日本なら神隠し、でも実は宇宙人に連れ去られたと、今も昔も世界各地にあるエピソード。
そんな雑誌記事やTV番組を、憧れそのままに、本気で映画にした一本。

ちゃんと、”大人”の心=硬い心で未知のものを信じない人々が、水を差す場面もあるのが、ご愛敬。
どこの世界でも、柔軟な子ども・思春期を押さえつけようとする大人はいるものだ。

少年のころに持っていた好奇心がうずきだし、何かを追いかけたくなってくる。

現実にも、未知なるものともコミュニケーションをとれるんじゃないかと夢を見せてくれます。

そんな、冒険心と好奇心をお持ちのあなたにお勧めです。

≪2024.5.17追記≫

『E.T.』はこの映画の続編と、『E.T.』のDVD特典:監督インタビューで監督がおっしゃっていた。至極納得。
 この映画のキャッチフレーズ「we are not alone.」がつながっているようでうれしい。

上にも記したが、未知のものへの怖れと好奇心を描き出した映画として最高。
 あの、キラキラした瞳にやられる。
かつ、特筆すべきは、そんな取りつかれたものへの狂気を描いた映画としてもすごい。
 自分の中にあるものが何なのか、それを繰り返し、繰り返し、自問自答する。周りの者から心配され、恐れられ、奇異にみられても、見捨てられても、とらわれ、離れられない思い。
 ”創造”もこういう狂気をはらんだものなのか?ロイが何度も何度もデビルスタワーを作るシーンにも圧倒される。自分を突き動かしているものを形にしたい思いには共感するものの、あのやり方では、周りの人はひくばかり。それでも、表現し続けなければ自分が壊れてしまうような思いに突き動かされる様。”創造”の苦しさと喜びを見事に表現しており、そんな思いにとらわれてみたいような錯覚まで与えてくれる。
 そんな狂気に巻き込まれる方はたまったものではないが。かつ、それまで積み上げてきたものや平穏な日常生活、堅実な将来設計は壊れること必須だが。

デビルスタワー。映画ではセットで作っているが、実際にある名勝。
 『地球各駅停車 名作映画を歩く 未知との遭遇 デビルスタワー(1993年8月1日の毎日新聞)』を読む。
 ”デビルスタワー”とは白人が付けた名前で、この一帯に住んでいたネイティブアメリカンは”マトティビ(熊の小屋と言う意味)”と呼んでいたそうだ。
 この一帯に住んでいた㊟ネイティブアメリカンの聖地で、セオドア・ルーズベルト大統領が1906年に指定したアメリカ初のナショナル・モニュメント(天然記念物)。
 そしてこの土地の元々の住民だったネイティブアメリカンには、宇宙人との交流の言い伝え(トゥルトゥツヤテというこの映画そっくりの宇宙から来たお友達や宇宙に音楽と歌がある)があるという。
 だから、この地を舞台に選んだのか、ネイティブアメリカンの聖地とは知らずに、あの造形・地形で選んだのかはわからないが、ネイティブアメリカンの聖地が舞台と、妙にテンションが上がってしまった。やはり、太古からの、精霊の力と、宇宙とつながっている気がして嬉しい。
  ㊟ネイティブアメリカン強制移住政策によって、居留区に囲い込まれ、移住させられていた。

元々、”神”への信仰も、人間には力の及ばぬものへの怖れと憧れ。
”スピリチュアル”なものと、”科学”とが二分し、対立するような認識を植え付けられているが、元々は同じもの。それを、了解できる説明付きで受け止めたいか、感じたいかの差のような気がしてくる。
 そんな私の心の奥底にうずく思いを活性化し、かつ大いなるものに抱かれているような気持にさせてくれる。

とみいじょん