劇場公開日 2021年5月28日

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「星新一風味のサイケな夢のような」ファンタスティック・プラネット ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5星新一風味のサイケな夢のような

2022年2月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 ファンタジーは自由だ。リアリティの有無などというせせこましいくびきから逃れて、解放された世界で無邪気に遊べる。そんな世界観で綴られた物語から、何を受け取るかもまた自由だ。何かの教訓でも、単なる筋書きの面白さでも、美しさでも怖さでも。

 星新一のショートショートが思い浮かんだ。星新一作品にはよく当然のように宇宙人が出てくる。高度な文明を持っていたり、青い皮膚だったり、人間を誘拐して動物園の動物のように見せ物にしたりする。ドライに描写された非日常の中に、押し付けがましくない寓意が見える。
 遠い未来の世界で宇宙人に飼われ、不都合が起きれば蚊やノミのように殺される人間の物語を見ながら、人間以外の動物から見れば人間の姿や振る舞いはあの宇宙人のように不気味で尊大に見えるんだろうなと思ったりした。

 ただ、分かったような気になれるのはその辺りだけだ。残りの大半は、超越したセンスのビジュアルと斜め上のクライマックスに呆然とするしかない。いちいち驚いている間に置いてきぼりにならないよう付いていくのに精一杯だ。
 ドラーグ族の姿はもちろん、次から次へと登場するよく分からない動植物とその生態。どれも独創的でアートセンスを感じるが、何故か見ていて不安になる。ティバの学習ヘッドギアや飼われている人間のファッションなど、ごく一部かわいい要素も点在するので余計にカオスだ。
 極め付けは、ドラーグ族の瞑想シーンだ。その色使いとサウンド、4人並んで瞑想する場面で体が変形する様子などは、何だか脳みその中を直接かき回されているような、催眠をかけられているような、謎の感触があった。ホラー映画のような怖さではなく、洗脳ビデオのような、うっかりすると取り込まれそうなちょっとした恐怖。

 夢野久作の「ドグラ・マグラ」という、読むと気が狂うという歌い文句の小説がある。なぜそのように言われるかというと、狂人の精神状態を主観で描写しているかのようなくだりがあるからだ(私の解釈です)。この本を読んだ時に感じた、脳内に不可解なものがぬるりと入ってくるような恐怖と、本作の謎めいた感触はよく似ている気がした。
 理屈では捉えきれないが、言葉にならないこの不穏な感触、嫌いじゃない。

 徹頭徹尾振り切ったイマジネーションとシュールなビジュアルで固められた中、アップになった時の人間の顔とお婆さんのおっぱいの垂れ具合だけがやたら現実味があるのがまた独特の雰囲気を醸し出していた。
 深夜にNHKBSで放送していたものを録画して観たが、リアルタイムで真夜中に観ていたら何かを持っていかれていたような気がする(妄想)。ドラーグ族の瞑想のように……

ニコ
NOBUさんのコメント
2022年2月28日

今晩は。
 ”深夜にNHKBSで放送していたものを録画して観た・・”
 ええっ!今作、NHKBSで放送されたのですか!ビックリ!
 星新一さんのショートショートは”ボッコちゃん”を始めとして、小学生時代に愛読していました。真鍋博さんの挿絵も好きでしたね。
 夢野久作の「ドグラ・マグラ」は、ちょっと表紙が小学生にはいかんだろう!と言うモノでしたので、読んだのは高校生になってからでしたが・・。
 では、又。

NOBU