劇場公開日 2021年3月26日

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「これが人間業で作られたとは!」ファンタジア とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これが人間業で作られたとは!

2021年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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CGどころかコンピューターすらまだない時代の作品。
 この映画の公開は1940年。コンピューターはまだ、『イミテーションゲーム』に出てくるようなものだった頃(第二次世界大戦終結1945年)。

どのように、映像と音楽を合わせたのだろうか?
 先に音楽を撮って、それにあわせて、0.001秒単位でコンテを書いて、セル画を起こして、コマ撮りした?
 先にできたアニメーションを見ながら、指揮して演奏した?

どちらにしても、アニメーションと、取り上げたクラッシックの楽曲と、バレエを始めとするダンス、そして(笑)について知り抜いていなければ成しえない技だろう。

サウンドトラックでも見て取れるが、音の振動に合わせて画面が反応しているかのような映像。最近ならば、CGで声や音に合わせていろいろな色が画面に現れるソフトがあるけれど、何度も繰り返すが、この映画はコンピュータ誕生以前の作品。
 そんな音感の良さは、全編にあふれている。花びらの群舞、🍄の群舞、カバを始めとする動物たちのバレエ、魔王の動き…。ここの一挙手一投足が、楽曲のシンバル・トライアングル、管楽器などとずれていたら、どんなに間抜けに見えるだろう…。
 それを考えるだけでも、人間業とは思えぬ奇跡のアニメーション!

だが、がちがちに作りこまれた映画ではない。
時に、カトゥーンの(笑)を振りまき、時に優雅に、時に恐ろしく…。
創造力・イマジネーションの翼を広げて、というと必ず思いだす作品。

この楽曲に、恐竜?カバ?ケンタウロスにパーン等を合わせるかと意表を突かれる組み合わせもあり、遊び心が満開。この楽曲のファンなら受け入れがたいものもありそう。
 個人的には、『魔法使いの弟子』と『禿山の一夜』は、これ以外には考えられないくらいにはまってしまった。

そして、たくさんの後進に影響を与えたのかな?
 手塚治虫先生の『展覧会の絵』とか、ユニコとかを思い出してしまった…。
 『禿山の一夜』の魔王は、永井豪氏の魔王ダンテやデビルマンに似ている…。
 他にもたくさんありそう…。

世界遺産。永久保存版。

≪追記≫
家を掃除していたら、パンフレットが出てきた。
 そのパンフレットによると、たくさんの人のパイオニア精神によって製作された映画ということが解る。
 企画は≪白雪姫』を作っていたころからとのこと。
 最初は、ミッキーマウスの短編として『魔法使いの弟子』だけだったのが、ディズニー氏と仕事をしたいとスタジオを訪れた指揮者ストコフスキー氏が制作に加わって、これだけの作品となったとのこと。
 音楽評論家・作曲家・作家・ラジオ解説者であるテイラー氏、指揮者ストコフスキー氏・フィラデルフィア管弦楽団、60名のディズニーの門下生、11人の監督、背景だけの画家に30名…。他にも他にも…の力が合わさり、できた作品。
 『春の祭典』のスタッフたちは、博物館にある骨格等で「骨と筋肉の結びつきの具合や、骨と骨とのあわされ方から、画家たちは、恐竜が跳んだり、はねたりできたか、ドシンドシンと歩くだけだったかどうかを推理」したんだそうだ。『時の踊り』の動物たちは「ありえなーい!」という動きを見せてくれるが、それでもその動物らしさが残っているところがすごい。
 パンフレットの中で、音楽評論家・日野康一氏は「…『魔法使いの弟子』『春の祭典』『はげ山の一夜』をポピュラーにした。もし、『ファンタジア』がなければ、いまでもこんなに高名かどうかわからぬくらいだ」と記している。
 「『ファンタジア』は音楽家の解釈ではなく画家の解釈です。その方が却って誰にでも愉快に楽しんでもらえるーそれがウォルト・ディズニーの製作意図です。音楽は専門的にばかり聴かないで思い切り自由に空想の翼をひろげて自分なりに美しいファンタジアを描き出せばよいと考えた」のだそうだ。
 とにかく、「楽しんでもらいたい」その心意気が伝わる。奇想天外な発想は、”あえて”のことなのだろう。
 アニメ長編映画3作目。本当のパイオニアだったのだなあ、芸術を創るということはこういうことかと改めて思った。

とみいじょん