劇場公開日 1989年9月15日

「愛すべきぎこちなさ」誰かがあなたを愛してる 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0愛すべきぎこちなさ

2020年7月11日
PCから投稿

見かけなくなった有名人が、いまどうしてるか、知りたくなることがある。
エイリアン2に出演しリプリーに守られる少女を演じたCarrie Hennは後に教師になった。なおサインをせがまれることがあるとwikiに書かれていた。

とても印象的な作品のなかにいて、それ以来、すっかり見なくなった人──これが「あのひとは今」の最大の動機である。

秋天的童話のチェリーチェンもそんな人だと思う。
80年代香港の人気女優であり、前後にも出演作はあるが、この映画が突出したカルトになったせいで、ほかの出演作がスポイルされた──という感じだった。
二階堂ふみをさらに濃くした顔立ちで、寂しそうなとき、ぐっとくる。
wikiによると富豪と結婚したが夫を亡くしている。女優業はやっていないようだ。

チョウユンファは二局のチャンネルを持っていると思う。英雄本色に代表される香港ノワールの局と、この映画などで見る軽佻な男の局面である。
いずれにしても、とても下手な俳優だと思うが、もっとも魅力的な大根役者でもある。不思議な俳優で、下手に演ずれば演ずるほど、いい。

英雄本色で、びっこをひいて歩くすがたや、えたいのしれない弁当を食べているときホーに再会し、食いもんを、飛ばしながら、絶叫するマークがわすれられない。クサさと下手さが、こんなに魅力的な俳優はどこにもいない。

本作のサミュエルも強がっているけれど、ジェニファーを不憫に感じている。それがじょじょに愛情になっていく。その子供っぽい心象が、ダイレクトに描かれている。香港映画らしい稚気にあふれながら、むしろその純粋なクサさと下手さが、とんでもない魅力へ昇華してしまった映画だった。

いつでも好きなところから見はじめて桟橋のレストランで香港訛りの英語でおふたりですか──まで見てしまう。なんど見たかとうにわすれた。

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津次郎