ゾラの生涯

劇場公開日:

解説

フランスの文豪ゾラの生涯とドレフュス事件を大きく扱った伝記映画で、「科学者の道」と同じくポール・ムニが主演し、ウィリアム・ディーターレーが監督したものである。マシュウ・ジョセフスンの「ゾラとその時代」に取材して、ハインツ・ヘラルドとゲザ・ハーゼッグがストーリーを書き、この二人にノーマン・ライリー・レインが加わって脚本を執筆している。主演のムニをめぐって「桃色の店」のジョセフ・シルドクラウト、「クリスマスの休暇」のゲイル・ソンダーガード、「呪いの家」のドナルド・クリスプ、「どん底」のウラジミル・ソコロフ、「町の人気者」のヘンリー・オニール、「アメリカ交響楽」のモーリス・カーノフスキー、グローリア・ホールデン、エリン・オブライエン・ムーア、ルイス・カルハーン、ロバート・パラットらが主要な役を演じている。撮影は「恋の十日間」のトニー・ゴーディオが指揮した。この映画は1937年度アカデミー賞の作品賞、脚本賞、助演男優賞を得た大作である。

1937年製作/アメリカ
原題:The Life of Emile Zola
劇場公開日:1948年6月

ストーリー

若き日のエミール・ゾラは、パリの屋根裏の破れ部屋でポール・セザンヌと同居し 、真実追求の激しい情熱を著作に打ち込んだ。真を書いたゆえにようやく得た出版社での職も失ったが、ある日警官に追われていた巷の女ナナを救い、彼女の身の上話を小説に書いて大好評を得、続いて書いたルーゴン・マッカール$書十数巻はゾラを一流作家とし、やがて富と地位を得て文豪の名声を博した。そのころ全世界を騒がせていたドレフュス事件が起こった。軍の機密を某国にもらしている参謀部将校が、何者であるか突き止め得なかった軍首脳部は、ユダヤ人であるが故にドレフュス大尉を犯人と断じ、反逆罪に問い悪魔島へ終身刑の囚人として送った。夫の無罪を信じるドレフュス夫人は、ゾラを訪れて世論に訴えて夫を救ってくれと頼み、書類を渡した。ゾラは有名な「余は訴う」と題する一文を草してドレフュス事件の再審を天下に訴えた。軍首脳部はすでに真犯人がエステルハジー少佐であることを知っていたが、一度有罪と決してドレフュスの処刑をくつがえすのは、首脳部の責任を問われる恐れがあるので、真相をもみ消すことに尽力した。軍は裁判所に干渉し、ゾラを中傷罪として逆に訴えるとともに、いくつかの新聞にゾラは国賊なりと書かせて大衆を扇動したのであった。かくて、ゾラの友人である弁護士ラボリの熱弁もかいなく、ゾラは有罪となり二年の禁固が申し渡された。友人たちは計ってゾラを英国に亡命させた。その後も友人たちは正義のための論陣を張り続け、そのうちに政変があってフランスの政府は一変した。このためドレフュス大尉を処刑した軍首脳部はことごとく退職させられ、真犯人エステルハージ少佐は自決してしまった。ゾラは愛国者として迎えられ、ドレフュスも悪魔島から召還され、改めて軍籍に戻り中佐に昇進した。その喜びの日の前夜、ゾラは書斎で執筆中ガス中毒で死亡した。ゾラをパンテオンに祭る日には、アナトール・フランスじゃ悼辞を述べた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

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映画レビュー

4.5イスラエル建国のシオニズムへの匂わしは無かったが…

2024年2月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

イスラエルによるガザ地区侵攻の最中、
アカデミー作品賞を受賞したこの作品が、
ユダヤ人がパレスチナの地を目指すように
なる切っ掛けの一つとなった
“ドレフュス事件”を扱っていると知り
急遽初鑑賞した。

偽善的書物としてストーブに燃やして
暖を取ってむせぶシーン、
警察から当局批判記事の内容を警告され
それに反発して首になった出版社から
賃金を受け取る場面、
そして傘のエピソード等、
“高尚な”ユーモラスなウィットにニンマリ
させられた後には、
一転、優れたヒューマニズム的展開と、
さすがアカデミー作品賞受賞作との
納得の出来映えに満喫し、
未鑑賞の名作がまだまだあることを
痛感させられた。

友人セザンヌの言葉、
「芸術家は貧しくあるべきだ、
腹の膨らみと共に、才能にぜい肉がつく、
君はもうあの頃には戻れない、
でも忘れない」と語るゾラとの別れのシーンは
とても良い出来映えに感じた。
早々に作品から退場はするが、
セザンヌ役の彼こそが
本来はアカデミー助演男優賞に相応しかった
のではと思えた。
ゾラはセザンヌのこの言葉を心に秘めていた
ことから、逆風に耐えながらも
ドレフュス事件に対峙出来たのだろう。

映画の冒頭での断り書きもあったが、
ドレフュス事件の概要や
ゾラの生涯を垣間見ると、この映画での
フィクションもかなりありそうだ。
ゾラの最後の執筆、
「世界を征服するのは武力ではない、
自由に満ちた思想だ」は、
これも事実なのか、この映画での創作なのか
は判らないが、
世界中で紛争の増してきた昨今、
我々が目指すべき世界を
語っているようで重い言葉だ。

しかし、当初注目していた
ドレフュス大尉が
ユダヤ人との説明や台詞は全く無く、
この事件がイスラエル建国のシオニズム
への匂わしも無かった。
この作品の主題はあくまでも“ゾラの生涯”
なので、この事件の重要な要素ではあった
ものの割愛されたのだろうか。

この後に鑑賞予定のポランスキー監督の
「オフィサー・アンド・スパイ」では、
この点についてはどう描かれているのか
楽しみになった。

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KENZO一級建築士事務所

4.0法廷劇

2024年2月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

すきま風エピソードがなかなかにくい。寒さに悩まされなくなれたと思ったら。

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ouosou

3.5エミール・ゾラの正義と自由の精神の啓蒙映画

2020年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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Gustav

3.5「私は 弾劾する!」

2019年5月6日
Androidアプリから投稿

古い映画だったが、それが かえってゾラの時代の
フランスを 彷彿とさせる

私は「ドレフュス事件」のことが 知りたかったので 概要がつかめて、良かった
映画の主題も 彼の個人的成功より、この裁判で
彼の果たした役割にあるように、思う
(フランスの共和制を磐石にした)

冤罪だったドレフュス(ユダヤ人)には 苦しみ以外の 何ものでもないが、この事件が シオニズムに繋がり、イスラエル建国まで いくのだから
歴史的大事件である

ゾラの 新聞での 大統領宛の公開書簡と
裁判での 反論を読んでみたくなった

マーロン・ブランドが 尊敬する ポール・ムニ、
演技に対する執念みたいなものを 感じる
(今の時代から見ると やや重ではあるが)

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jarinkochie
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