生きる(1952)のレビュー・感想・評価
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最初に見た黒澤さんの作品
高校の教科書に生きるが載っていて、現国の先生が嬉しそうに視聴覚室で何時間もかけて見せてくれた。
得意そうに、どうだった?と聞かれるものの、なんと応えていいやら、高校生には微妙な映画だった。
でも、私の心の中に、志村喬さんラブな気持ちが強く残ったのだ。
それまでなんとなく自分の好みは、ジャニーズ系やら美形俳優ではないことに気づいていたが、これではっきりしたのだ。
私は、冴えないおじさまや、知的なお爺様が大好きである、真剣に、ということに。
ゴンドラの唄のシーンなんか、後ろから、よくやったね、頑張ったね、と抱きしめたくなるくらいだ。
他の作品の志村さんと全然違う
何度見ても三船敏郎さん志村喬さんはかっこいい。
DVDで見た時よりも、ずっと聞き取りやすく画面も見やすかった。
公園を完成させる直前、本当に生きたのだろう。
人生の見つめなおしか官僚批判か
総合:65点
ストーリー: 65
キャスト: 70
演出: 75
ビジュアル: 60
音楽: 65
無為に生きてきた人間が、死を意識したときに今までの人生を振り返り、残った人生に何をするかを考える。彼の場合はあまりに過去にしてきたことがないことに気付き、自分の寿命があまり残されていないことを聞いたとき同様に呆然とするのであるが、しかし今更何をやっていいのかすらもわからない。
そのような彼ですら、死んだ気になれば怖いものなしで自らを奮い立たせて何かを成し遂げるために精一杯の努力をする。官僚制度に歯向かい上司に歯向かい古いしきたりに歯向かって一心不乱に努力をする。その精一杯の半年ほどの時間は、彼の何もしてこなかった30年以上の価値があったことだろう。皮肉なことに、彼は死を悟ってから初めて本当の意味で生きることが出来た。
「生きる」という題名であるし、実際に主人公の生きる意味を探求するのが主題にはなっている。だが同時に官僚制度への批判が最初から最後までこの映画の主題にもなっている。今でもお役所仕事という言葉が悪い意味でよく使われているが、この時代は恐らく今以上にその駄目振りがひどくて、彼の人生を通してお役所の仕事のお粗末ぶりが徹底的に皮肉にさらされる。結局これがもう一つの主題なのかと思って、私は世間の高い評価ほどにはあまり主人公の生き方にどっぷりと浸かれなかった。次々に出てくる駄目上司と無能官僚たちの体たらく。どうしても彼の生き様を見て感傷的になるというよりは、お役所仕事に関する社会派映画を見ているような気になって焦点が定まらなかった。
それでも彼にとって、過去の人生を見つめなおし、人生をやり直すことになったその短い時間において、やるべきことをやり遂げたという満足感があったことだろう。だから彼の死後、業績が正しく評価されようがされていまいが、彼にとっては満足した人生になったんじゃないかと想像する。
古いから仕方がないのだが、画像は綺麗ではないし、音声もひどくて日本語なのに何を言っているのかわからない部分がある。流石に科白がはっきりと聞き取れないのは辛い。
地方公務員は「無意味に忙しい」
映画「生きる」(黒澤明監督)から。
もう何度も観てきた、地方公務員必見の映画である。
その度に新しい発見があるから、黒澤監督の凄さを感じる。
さて、メモをとりながら観たのは初めてのため、
整理していたら、面白いことに気がついた。
市役所の仕事に対する厳しい視点が台詞に現れている。
作品冒頭「今や(30年勤めた市民課長に)意欲や情熱は少しもない。
そんなものは役所の煩雑極まる機構と、それが生み出す
『無意味な忙しさ』の中で、まったくすり減らしてしまったのである」
とナレーションが語り、
今度は作品半ば「この30年、役所でいったい何をしたのか、
いくら考えても思い出せない。覚えているのは、つまり『ただ忙しくて』、
しかも退屈だったってことだけだ」と主人公が語る。
そして、作品の後半、他の公務員が呟く。
「役所にだっていい人間、入ってくるんですよ、でも長くいるうちに。
あの複雑な仕組みの中じゃ、何一つ、第一あんなに『無意味に忙しくちゃ』
何か考える暇さえないんだから」
共通なイメージは、地方公務員は「無意味に忙しい」である。
この作品、60年以上も前の作品だから、と笑い飛ばしたいところだが、
作品のナレーターが、力を込めて、叫ぶように訴える
「いったい、これでいいのか。いったい、これでいいのか」が印象深い。
生きがいについて
しみじみ泣けるが、見終わってこんなに清々しい気持ちになれる作品は、そう沢山はない。
誰もが今までの自分の生き方を振り返り、死ぬまでの自分の持ち時間をどう使うかを考えてみたくなるだろう。
生まれ変わろうとしている主人公を祝福するように「ハッピーバースデイ」が聞こえてくるシーン、「いのち短し恋せよ乙女・・」と歌うシーンは今でも時折り思い出す。私の宝物の一つ。
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