劇場公開日 1995年7月29日

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「空き缶の行方はどこ?」クローズ・アップ ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0空き缶の行方はどこ?

2021年12月12日
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鑑賞方法:映画館

知的

1 現代アートハウス入門2の一夜として、取り上げられたのがキアロスタミの本作。上映後に深田晃司の講義があった。

2 本作は、実在の映画監督になりすましした一人の青年の行状と裁判のやりとりを描いたドキュメント。全体的にこの映画を撮るに当たってのキアロスタミの周到な準備と指導、演出力を感じた。

3 ドキュメントとは言いながら、冒頭からなりすましした青年を逮捕するまでの道行の場面は劇映画のト−ンになっている。先導役の記者を中心に動的である。道端の空き缶がなにげに蹴られ、カラカラと音を立てながら転がっていく様をカメラが捉え続けていた。これからの青年の行末を暗示するかのようで印象的なショットであった。

4 青年の逮捕の場面は、映画の中盤では、青年と被害を受けた家族側から再現される。青年と会話していた家長の家に記者が訪れ、なりすましが暴かれていく。状況を察した青年の翳っていく表情をカメラが捉える。このシ−ンは、映画の導入部の視点を変えた繰り返しであり、奥行きを広げる手法として上手いと思った。

5  裁判のシ−ンは、深田の話では、再現ではないらしいが、流れに停滞や淀みが一切なく、実写なのかは疑わしい。ここでは、被害を受けた息子が事件の原因は社会の混乱が生み出した貧困であるとし、自分の苦しい立場を述べ、青年の減刑を求めた。キアロスタミのイラン社会への厳しい眼差しを示した。

6 出所後の場面は、驚きとともに大事なピ−スとなった。そして、鉢植えのショットは美しく印象的であった。

ショコワイ