「この世は回転ドア」グランド・ホテル(1933) everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
この世は回転ドア
ベルリンで一番というGrand Hotelを舞台にして人生の縮図を描いた、アカデミー作品賞受賞作。
金で不幸になり、金で幸せになる。
落ち目かつ現実逃避的なダンサーや、生活費のためにこれまでの人生の大半や貞操を犠牲にし、嘘をつき、盗みを働いてきた宿泊客達の群像劇です。今では見慣れてしまった形式ですが、本作が「グランドホテル方式」の教科書的存在だと知りました。
個人的には内容よりも、伝説的女優Greta Garbo目的で鑑賞。
遠目に全身を見ると彼女の美貌が際立ちます。ただ、元はサイレントで人気を博したからなのか、現代からすると演技がやや仰々しく感じました。自殺を考えるほど落ち込んでいたかと思えば、恋した途端に舞い上がるダンサー役も、彼女自身がbipolar疑いと知ると、演技なのか、素が入っていて余計そう見えてしまうのか、とても極端でした。彼女の生き様と被るということから知られた名セリフ
“I want to be alone.”
も本作です。
遠慮して?同時期に撮影に臨むことはなかったというJoan Crawford、眉毛は変でも彼女らしさがありました。
肝心の内容ですが、労働者も経営者も、善人も悪人も、生きている限り金に縛られる様が描かれていました。Grusinskayaは金と無関係のように見えますが、彼女の取り巻きからすれば、公演の売り上げの要なだけで、彼女を蝕む孤独にも、酔わせる恋にも、真摯に向き合ってくれるわけではありません。
コソ泥の自称”Baron”は、誰にでも愛想の良い人ですが、デートに誘っておきながら心ここに在らずだし、カッコつけたいがために旅費を工面しようと盗みを繰り返すし、盗む相手を選ぶ点が憎めないとは言っても、あまり同情できる人物ではありませんでした。Grusinskayaのお財布に頼っていれば、殺されないで済んだでしょうし。金目のものを盗むつもりが、ハートを盗られて自滅してしまいました。
Preysingは嫌われ役を全部引き受けている感じ。
彼の主力商品であるモップまで、Baronのワンちゃんに辛く当たる(^_^;)。
一番共感できるのはKringeleinでしょうか…。コツコツ真面目に勤めてきたけれど、余命僅かと知り、貯金をパーッと使おうとしている初老男性。こんなに幸せなのは初めてだと人懐っこく喜んだり、遊び方を知らないため酒や踊りやギャンブルを素直に学んだり、必死に落とした財布を探したりと、微笑ましかったです。Flaemmchen、やはり半分は彼の財布目当てなのかなぁ…(^_^;)。財布が空になっても側にいてくれるといいんだけど。
別れ際に女性のお尻を叩いたり、仕事上の立場を利用して関係を迫ったり、病人を解雇したり、思いっきりセクハラ、パワハラでした。嫌な奴は罰せられるも、当時は許容範囲内だったのかと思うと観ていてあまり気持ちの良いものではなかったです。お金で当たり前のように女性を釣る所も嫌でした。
傍観者役っぽいDr. Otternschlagが最初と最後に、
“Grand Hotel. Always the same.
People come, people go.
Nothing ever happens.”
と語りますが、一応色々起きるわけで。
結果ホテルに変化がないってことなんでしょうけど…。殺人が起きたことで、これから客足が遠のくかもよ?!
観終わって、これで良かったのかなぁ…と思ってしまう話でした。
人生の終わりにこんなモヤモヤしたくないなぁ。
“Just another desk slave. Money.”
“You think you have free license to be insulting? Believe me, you have not. You think you're superior, but you're quite an ordinary man, even if you did marry money and people like me have got to slave for you for 320 marks a month.”
“When a man's working himself to death, that's what he's paid for. You don't care if a man can live on his wages or not.”
“You can't discharge me. I'm my own master for the first time in my life..... Before I can be discharged, I'll be dead!”
“...for the first time in my life, I've tasted life!”
“Life is wonderful, but it's very dangerous. If you have the courage to live it, it's marvelous.”
“Believe me, if a man doesn't know death, he doesn't know life.” (「生きる」が同テーマですね。)
“It's a short life, but a gay one.”
“Come on. Drink to life, to the magnificent, dangerous, brief, brief, wonderful life..... and the courage to live it.”
“You know, I've only lived since last night, but that little while seems longer than all the time that's gone before.”
“Nobody ever gives you anything for nothing. You have to buy everything, and pay cash for it.”
“Every hour costs money.”