「史実より娯楽に徹したオペレッタ映画の、開放された極上の愉悦」会議は踊る Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0史実より娯楽に徹したオペレッタ映画の、開放された極上の愉悦

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1814年のウィーン会議の史実から発想された、手袋売りの娘クリステルとロシア皇帝アレクサンドル1世の美しく咲き夢広がり、そして儚く散り行くロマンス。忍び寄るナチズムの気配は全くなく、異様な程の明朗さが際立つ実に楽しいオペレッタ映画の名作。宰相メッテルニヒの裏工作もありで、国際会議の駆け引きを娯楽的な色彩に染め上げる徹底ぶりに、映画としての凄みを感じる。馬車に乗ったクリステルのリリアン・ハーヴィーが主題曲”ただひとたび”を歌いながら皇帝の別邸に着くまでの長い移動撮影シーンが、クライマックスにして圧巻。シューベルトの”軍隊行進曲”も効果的に使われている。ドイツ映画の最大にして最後の輝きを想わせる歴史的な映画遺産。

Gustav