劇場公開日 1981年6月6日

「ロレッタ・リンは日本では知名度が高くないからこういう邦題にしたのだろうが、やはり原題の『炭鉱夫の娘』がぴったり来る。シシー・スペイセク流石の好演・好唱。」歌え!ロレッタ 愛のために もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ロレッタ・リンは日本では知名度が高くないからこういう邦題にしたのだろうが、やはり原題の『炭鉱夫の娘』がぴったり来る。シシー・スペイセク流石の好演・好唱。

2022年5月27日
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①パッティ・クラインはカントリーミュージックをポップミュージックの領域まで拡げた歌手として記憶されている(伝記映画のジェシカ・ラング主演の『スィート・ドリームズ』も良作)。ドリー・パートンもカントリーミュージックのソングライターとして出発したがポップミュージックでも全米制覇した(近々「ロックの殿堂」入り)。この二人に比べロレッタ・リンはいわゆる(ド)カントリー一筋でやって来たから上記二人程は日本で知名度は高くないのだろう。②しかし、ロレッタ・リン(テネシー州のど田舎生まれ)もドリー・パートン(テネシー州のど田舎生まれ)も共に極貧の育ちというのが偶然ながらもアメリカ人の琴線に触れるのだろう。(前者は『Coal Miner's Daughter』で、後者は『Coat of Many Colors』で極貧だった子供時代の事を歌っていてどちらも泣かせます。)③シシー・スペイセクも(ロレッタ本人からの強い推薦があったらしい)ビバリーダンジェロも、大分練習したんだろうけれども、本人顔負けの歌唱を聴かせて、やはり向こうの役者さんは一流ともなれば何でも出来るんだなぁ、と感心感激。④愛の唄を歌わせればそのエモーショナルな歌唱は他の追随を許さないけれども本人はいたって姉御肌・鉄火肌のパッティ・クラインをダンジェロが好演(『スィートドリームズ』でもジェシカ・ラングが好演)。⑤(ど)カントリーよりもポップスよりのカントリーやカントリー・ロックが好きなので、殆ど知らない曲ばかりだったが、私の一番好きなLinda Ronstadtがアルバムで取り上げたカントリーの名曲「I Fall to Pieces 」や「Crazy」が聴けて嬉しい限り。⑥ロレッタが神経衰弱の為舞台で歌えなくなった顛末は、ロバート・アルトマンの傑作『ナッシュビル』(1976)でロレッタをモデルにしたロニー・ブレークリー扮するスター歌手のエピソードに取り上げられている。⑦ロレッタとドューとの夫婦は色々と波風は立てたがドューが亡くなるまで添い遂げた(パッティ・クラインは離婚している)。神経衰弱を患った他はそれ程波乱万丈な人生を送った訳ではない。その代わりシシー・スペイセクはロレッタが憑依したような好演と存在感とで全編を支配している。『キャリー』(1976)では、実年齢27歳にして未だに初潮を迎えていない女子高生を違和感なく演じただけでなく、最初は地味でブスな女の子からクライマックスでは輝くように美しい女の子になった(その後頭から豚の血を浴びせかけられ恐ろしい惨劇を引き起こし悲劇的に死んでしまう)が、本作では実年齢31歳にして15歳の処女の田舎娘をこれまた違和感なく演じた上、ラストではカントリー・ミュージックの女王らしい美しさに輝く姿をたっぷり魅せてくれる。

もーさん