劇場公開日 1995年7月22日

「奇跡の生還にあるアメリカンスピリットを再現したロン・ハワード監督の誠実さ」アポロ13 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5奇跡の生還にあるアメリカンスピリットを再現したロン・ハワード監督の誠実さ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1970年の、爆発事故に遭いながらも奇跡の生還を遂げたアポロ13号の歴史に埋もれた事件を詳細に再現したパニック映画の感動作。近年発展著しいSFXを駆使した、宇宙船の打ち上げシーンや飛行シーンの鮮明な映像化があって制作出来た時代の流れにあるものは、アメリカンスピリットの再確認であろう。生きるために最善を尽くし、救うためにはあらゆる手段を考察し行動を起こす宇宙飛行士3人とNASA地上スタッフの通信を通して、それがスリリングに描かれている。「アメリカン・グラフィティ」で極平凡な青年を演じたロン・ハワード監督のトム・クルーズ主演映画「遥かなる大地」に感じた愛国心に溢れた特徴を、今作でも強く表している。
上映時間2時間20分と長いが、次から次へと起こるアクシデントとその対応のスピード感で引き込み、最後まで緊張感を失わない映画の語り口はテンポ良い。興味深いのは、アポロ11号から1年足らずの13号からの宇宙放送を一般のアメリカ人が関心を無くしていて、そうとは知らない機長のトム・ハンクス始め3人の宇宙飛行士が嬉々としてTVカメラで戯れ合うエピソードだ。機長の妻が事故発生後自宅に押し寄せてきた多くの報道人に対して、何とも遣りきれない怒りを抱くのも当然である。偉業より事件に食いつくマスメディアの無責任な姿勢が批判的に描かれている。
宇宙センターの総指揮を執る司令官と直前にメンバーから外された飛行士が冷静に対処する言動と他スタッフが感情を露にするコントラストに見る、ポリフォニックな情感表現の情操効果の面白さとその構成力の巧みさが素晴らしい。アメリカ国家の威信を賭けた宇宙計画の負の出来事を敢えて題材にした挑戦的な覚悟と、作品として失敗できないプレッシャーを想像すれば、これは充分評価に値する努力作ではないだろうか。ロン・ハワード監督のアメリカ映画人らしい誠実さが作品全体を包む良心作になっている。
  1997年 1月31日

Gustav