劇場公開日 2003年1月18日

「小さな人物を描ききる物語と演出の良さ」壬生義士伝 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5小さな人物を描ききる物語と演出の良さ

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

難しい

総合:85点
ストーリー: 90
キャスト: 75
演出: 85
ビジュアル: 75
音楽: 70

 動乱の時代に血生臭い組織において、たくさんの有名な英雄がいたのに、無名の人物のとても小さな物語が描かれている。こういう物語は話が多くの有名人の影に隠れて話が小さくなりすぎて退屈になるものもよくあるのだが、演出と物語がうまく調和していて魅力のある展開になっていた。何よりも家族を大切にして、それを守るためにはこの時代では時に命よりも大切とされていた名誉を傷つけ、命を懸けて家族のために働く。もちろん新撰組にいる以上は武士としての生き方を無視することも出来ず、結局そのためにまた命を懸けることにもなる。そんな中井貴一演じる吉村貫一郎の生き様に引き込まれた。
 脇役の登場人物の配役には満足したとは言い難い。例えば斉藤一が身請けした醜女役がすっきりした上品な美人顔の中谷美紀では、いったいどこが醜女なのかというのがあってのめり込めない。あまり美人じゃないけど不幸の影を背負った情け深い女優の配役は他になかったのだろうか。吉村貫一郎の家庭が困窮しているというのも実感がない。女房役の夏川結衣も同様に、所帯じみて貧乏に四苦八苦してるという雰囲気がない。もっとぼろぼろの服着て汚れたやつれた顔していないと、自殺を図るまで追い詰められている印象を受けない。基本的に女優を女優として綺麗に撮影しようとしてすぎていて、妾や貧乏武士の女房を撮影しようとしていない。
 それと剣術についても、場面によっては戦闘慣れした新撰組という割にはちょっと素人くささの残る及び腰なものに見えてしまったので、もう少し技術や凄みを出してほしい。

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Cape God