劇場公開日 1986年3月15日

「しずかちゃんの大金星」映画ドラえもん のび太と鉄人兵団 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0しずかちゃんの大金星

2020年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 戦隊ロボットブームに乗じて作られたかのような作品だが、基本的な構想の中には手塚治虫的SFストーリーが存在した。最初、青い球体はボウリングのボールかと思ったのに、巨大ロボットを操り、部品を呼び寄せるためのマシンだったのだ。

 鏡面世界は一種のパラレルワールドになっていて、そこの風景は現実世界とそっくりな建物があるのだが、文字は反転していて人間は存在していない世界。ロボットを探しにやってきた不思議少女リルルが現れ、留守の間にオイルを塗った“お座敷つりぼり”を盗まれてしまう。鏡面世界はどこの鏡からも行けるわけではなく、ドラえもんの道具を使わないと同じ場所へは行けないようだ。

 “ザンダクロス”と名付けた巨大ロボットは強力な兵器を搭載し、パラレルワールドではあるがビル群を破壊する恐ろしいもの。しずかちゃんが思わずひきつった顔を見せるが、破壊兵器の恐怖を如実に表現できていたように思う。地球よりも文明の発達したメカトピアという星では人間に失望した科学者=神がロボットの国を創造しようと“アムとイム”を作り、人間と同じようにロボットが進化した国となったが、奴隷制が廃止となり、ロボット奴隷の代わりに人間を奴隷にしようと地球侵略を企んでいたのだ。

 ロボットも人間と同じ過ちを繰り返している世界観。などと考えてる暇もなく、彼らは地球に鉄人兵団を送り込もうとした矢先だったのだ。機転を利かせたドラえもんは湖に張った鏡面に誘導させ、人間のいないパラレルワールドで一人相撲を取らせようという寸法だ。こうして上手くいくかと思っていたが、やがてメカトピア兵団は人間のいないことに気づき、湖めがけて兵力を集め、ドラえもんたちと局地戦争を仕掛けてくる・・・

 傷ついたロボット少女リルルを無償の愛で看病するしずか。彼女を指令本部まで行かせてしまうと鏡面世界の秘密がバレ、現実世界へとなだれこむ恐れすらあるのだ。私は敵なのよ。なぜ助けるの?というリルルの言葉にも動ぜず、人間の心の複雑さを思いもよらず伝えたしずかだったのだ。

 最終的にはしずかとリルルが神様に会いに行くという奇想天外な発想が功を奏すのだが、鏡、どこでもドア、引き出しのタイムマシンなどを駆使し、ワープを繰り返して3万年前のメカトピアへ向かうシークエンスは感動的。そして“アムとイム”に「人を思いやる気持ち」を注入しようとするのですが、自分が消え去ることも覚悟の上でリルルが最後の仕上げをするところに、しずかちゃんと一緒に泣いてしまいそうになるのです。

 新ドラえもんのリメイクでは青い球体がピッポというヒヨコロボットになるのですが、このオリジナルには残念ながらいません。しずかちゃんのヌードはないけど、リルルのヌードあり。

kossy