劇場公開日 1962年10月6日

「三大スター共演が魅力も役柄が嵌らず、内容も制作時の背景と合わない」若い人(1962) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5三大スター共演が魅力も役柄が嵌らず、内容も制作時の背景と合わない

2020年10月28日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

石坂洋次郎の出世作で戦前戦後併せて4回映画化された原作の3作品目。小説では函館のミッションスクール遺愛女学校をモデルにしたのを長崎の女子高校に変えて、開放的な雰囲気の中、恋愛に悩む青春ドラマの日活映画らしい作品になっている。主題歌を爽やかに歌う石原裕次郎、教師役の一寸背伸びした浅丘ルリ子、物怖じしない多感な少女役の吉永小百合の三大スター共演が何より見所で、内容が二の次になっている。教師と生徒によくある三角関係が大筋の話と、男にだらしない飲み屋の女将江波ハツの女性の生き方や立場が戦前の世相を反映したままで、父親を知らない娘恵子の苦悩と反発が物語を進めるが、戦争を挟んで25年の時代変化を消化した脚色の良さが見つからない。
それが結局キャスティングに及び、煮え切らない数学教師間崎の役は、彼自身のモノローグで理解できるのだが裕次郎の良さとは違うし、反対に浅丘ルリ子の女教師橋本は何を考えどうしたいのか曖昧で、彼女の魅力を引き出す役柄になっていない。江波ハツ役の三浦充子の演技も精彩を欠く。唯一、吉永小百合演じる女子高校生恵子の、繊細な神経ゆえ年頃の女性が抱える生き辛さのみ伝わる。
モノローグと語り過ぎる台詞の説明的な映画の面白さがない訳ではないが、ならばもっと振り切ったなら良かったのではと思わせる。

Gustav