劇場公開日 1968年8月14日

「怪獣が出現しそうな東宝特撮戦記」連合艦隊司令長官 山本五十六 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0怪獣が出現しそうな東宝特撮戦記

2021年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 先に2011年版を観ていたので、どうしても同じ台詞に納得してしまう。逆に考えると、40数年前にこの迫力を描き切ったという円谷英二に軍配が上がってしまう。その2011年版と比較しながら見ると、こだわりが感じられるのが海軍と陸軍との確執、飛行機乗りの飛行時間、ミッドウェー以降のラバウル、ガダルカナルの描写など。このガダルカナルの映像が戦争の悲惨さ、物資を運搬する光景、飢餓にあえぐ一般兵たちが悲しく映る。

 山本五十六の人間味溢れる描写よりは、軍人としてキリっとした雰囲気が印象に残る。やはり、日米開戦を避けたかったという彼の人間像は浮彫にされているが、その諦めるところもあっさり描き、決断力や南太平洋海戦以降の覚悟が伝わってくるのです。ただ、ドラマとしては平淡で、ドキュメンタリーを見ているような気分にもなるのですが、太平洋戦争の歴史を勉強するにはありがたい作品でもある。

 また、描写は少ないが大本営発表を鵜呑みにしてしまうマスコミの愚かな姿も描かれ、ミッドウェーでの4隻もの空母を失った事実さえ国民は知らずに戦勝ムードにあったことなど、山本五十六が死ぬまで皆頼り切っていたんだなぁと痛感。死を覚悟したかのように三船敏郎の目が潤んでいるところもいい。

 あきらかに模型だとわかる特撮はさすがの東宝特撮。逆に、あの空母から発射される砲弾はどうやって撮ったのだろうかと首をかしげるほど上手く作られていると感心した。プラモデルを作りたくなること必至。

kossy