劇場公開日 1960年4月13日

ぼんちのレビュー・感想・評価

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5.0名作中の名作です 市川崑監督作品を観たという満足感で一杯です

2021年9月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

物凄い傑作です
さすが市川崑監督と唸ります
市川雷蔵もまさにはまり役です

豪華な女優陣も見もの
更に演技達者な脇役陣が厚く配されています
タイトルバックから、これぞ市川崑監督というテンポの良いカットの連発で始まります

ユーモアのあるシーンも多く、腹を抱えて笑うこともたびたび

宮川一夫のカメラが市川崑監督の構図演出と面白い化学反応を生じているカットもありハッとさせられます

昔懐かしい本物の大阪弁が耳に心地よく、幼い頃を思い出してしまいました
現代の河内弁と畿内の色んな方言が入り混じった汚いえせ大阪弁とは雲泥の違いです
と、偉そうにいう自分の言葉もそれなのですが‥…
幼い頃に母の里帰りに連れられて大阪市内の実家に泊まった時、大阪の祖母からお前の大阪弁は汚いとなじるように説教されたことを思いだしました

名作中の名作です
市川崑監督作品を観たという満足感で一杯です

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あき240

5.0喜久ぼんと強く図太い女たち

2020年10月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

市川雷蔵×市川崑の文芸三部作を立て続けに鑑賞したが、どれも素晴らしい映画だった。めっちゃくちゃ面白い!
今作は「炎上」、「破戒」とは違いカラー作品で作風もそこまで重苦しいものではないので比較的おすすめしやすい。

内容も現代のライトノベルの設定によくあるある意味ハーレム物だし。
しかしそこは流石に文芸大作が原作なので、大阪船場特有のしきたりや文化などがきっちりと描かれていて見ていて勉強になる。こんな世界があったんだなぁと。

雷蔵が出演している映画を見る度にこの役者が好きになる。自分は断然勝新派ではあるが、雷蔵の役の降り幅は半端ない。硬派から軟派、学生、老人、侍、スパイとどんな役でもお手のもの。これが本物の芸なのだなと感心してしまう。

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柴左近

3.0ぼんぼん

2018年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 大坂船場、商人の町。河内屋は4代目までは女系家族でみな婿養子をとっていた。そこで生まれたのが5代目の喜久治(市川)で、なにかとつけて姑(山田五十鈴)、大姑(毛利菊枝)が船場のしきたりについて口を出す。跡継ぎの息子を産んでから、あっけなく弘子(中村)は離縁させられる。その後の女性遍歴においても、息子が生まれると5万円という大金を渡して親子の縁を切るようなしきたりがあるらしい。

 そんな大阪の老舗問屋のぼんぼんについてのお話。その後に社会派作品を量産する山崎豊子とは思えないほど、男と女についてのエピソードだが、ユーモアたっぷりの雷蔵効果もあってか憎めない作品となっている。残念なのは、口説きのテクニックなんてことより大金をはたいて女をものにすることばかりで、観ていて気持ちいいものじゃない・・・

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kossy

1.0戦中・戦後を描く市川崑

2015年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

大阪・船場で代々続く足袋を扱う大店の跡取り息子、ぼんちの半生を描く。ぼんちの父親は婿養子で、家の中は祖母が一切を取り仕切っている。母親はそのような祖母から全く自立できていない。
ここでは、家柄に合わない嫁は実家へと戻されるのだが、当主や跡取りが妾を持つことには鷹揚である。その妾に子供ができてしまった時でさえも、「船場のしきたり」に基づいて粛々と事後処理は行われる。そんなこともあり、市川雷蔵演じるぼんちは三人の妾を持つことになる。
しかし、満州事変がはじまり、船場の社会や雷蔵の店にも戦争の影が忍び寄る。原材料が統制されて足袋の生産が自由にはできなくなり、彼らの商売は縮小せざるを得なくなくなるのだ。そして、大阪の大空襲により、蔵一つ残してすべてが灰燼に帰す。
この一つ残った蔵に、雷蔵の三人の妾が逃げ込んでくる。さらには疎開先から祖母と母親も戻ってきてしまうのだ。懐にしまい込んでいたなけなしの現金を、等分にしてこの五人に分け与える雷蔵。彼はそれぞれを田舎へと疎開させるのだった。
これを見て、フランスの経済学者トマ・ピケティが、二つの大戦間に富の偏在が最も小さかったことを明らかにしていた著書のことを思い出した。多くの戦死者を出した二つの世界大戦の時代に、その前後に比べて人類の富の分配が平等に近かったという歴史の皮肉である。
市川崑の作品には戦中・戦後の混乱がよく描かれている。その時代を想起させる映像を挿入することで、映画があの時代について語っているということを強く観客に訴えているのだ。
少年期に、角川による金田一耕助シリーズや「ビルマの竪琴(中井貴一版)」を観てきた者にとって、この市川の回顧壁と呼んでいいほどの、執拗な戦争への言及への興味は尽きない。
それにしても、編集が良くないのか、巨匠・市川崑も1960年当時はまだ若かったのか、この作品の前半はリズムが滞りがちである。戦争が始まって、子供へ会いに岸和田へ行くあたりから乗ってくる感じがするのは、やはり市川は戦争の時代を描く映画作家だからなのだろうか。

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佐分 利信