緋牡丹博徒 鉄火場列伝

劇場公開日:

解説

「おんな刺客卍」の鈴木則文と「前科者 縄張荒し」の笠原和夫がシナリオを共同執筆し、「日本女侠伝 侠客芸者」の山下耕作が監督した緋牡丹博徒シリーズ第五作。撮影は「やくざ刑罰史 私刑」の古谷伸。

1969年製作/110分/日本
配給:東映
劇場公開日:1969年10月1日

ストーリー

明治中頃の四国徳島。緋牡丹のお竜は、子分清吉を重病のまま刑務所から出迎えたものの、折からの嵐の中で途方に暮れてしまった。そんなお竜を救ったのは江口、だが清吉は世話になった藍の小作人茂作の家で他界した。その頃、百姓たちは地主である旦那衆にしいたげられて、小作料争議を起していた。ところが旦那衆は江口を代表とする交渉を拒否、鳴門川一家は旦那衆の命によって悪くどい仕打ちに出た。この鳴門川は四国一帯に勢力を伸ばす観音寺親分と手を結び、徳政一家を乗っ取ろうとしていた。そんな折、茂作の息子猪之吉がイカサマをしたことから、江口が傷つけられ、千吉が殺された。遺体を引取りに来たお竜、鳴門川、それに千吉の親分武井の間に殺気がみなぎった。だが、居合わせた三次の機転で事なきを得、お竜は窮地を救われた。三次から鳴門川の悪事を聞いた武井はお竜と手を結び、観音寺を敵に回した。そんなある日、清吉に怨みを持つ博徒の小城がお竜に迫った。だが、小城はお竜の態度に好意を抱き、勝負をあずけた。お竜が熊虎を尋ねて道後へ向った留守に、鳴門川と観音寺は武井を闇討ちし、阿波踊りの当日を迎えた。三次は、武井に対する恩義から大尽賭博の真っ只中に乗り込んだが斬られ、小城の看病のかいなく死んだ。お竜の怒りは爆発し、阿波踊りに興ずる鳴門川を倒した。一方、お竜から事の一部始終を聞いた熊虎も観音寺の前で盃を割ると容赦なく斬り込んだ。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0シリーズ完成形

2024年2月22日
PCから投稿

オーソドックスなヤクザものを作ろうと思ったら、もうこれ以上のものはできない・・・ そういう 完成された作品だと思った。 この作品はそれを目指して作ったものであろうと。 こういった ヤクザものを面白く見せるためには、次から次へと新しいキャラクターを投入しないと話が持たない。 という 脚本戦略のもとに作り上げられ、それが成功した形であろう。人間関係が複雑すぎ 登場人物が多すぎる?・・それは観客の注意をそらさないための 一つのテクニックである。でないとベタなネタが多すぎて飽きられてしまう。 タランティーノ が パルプフィクションとレザボはドッグでこの手法を応用して成功している。特筆すべきは 鈴木則文が 脚本家として参加している 点である。「11人の侍」 といい、彼の 脚本家の力が ここに見てとれる。 冒頭の、お龍 がなぜこの町にしばらく住むことになるかというエピソード からして とてもよく描けている。それによってこのシリーズを見たことがない人も主人公に気持ちが移ったことであろう。
この時の藤純子は最高に美しい。この時にこの作品ができて本当に良かった。 色が白いのでカラーフィルムにとてもよく映える 。 映画全般のカラーがとても美しい。この独特の少し ベタベタした ネガフィルムの味が良いのだよ。 これだけいい 色が出ているということは 照明などに相当金をかけている。 これだけ金をかけて 映画を撮り続けることができたのなら 日本映画は未だに 世界一であっただろう。テレビが登場し 鉄腕アトムや鉄人28号が放送されても映画は負けなかった。日本映画は カラーに負けてしまったのだ。 ・・・フィルムと 照明だけでなく もちろんレンズ も 非常に 味が出ている。ピントがあっているところ以外はボケていて、そのボケがとても美しい。
私はこのシリーズとか、殴り込みのヤクザモノを あまり たくさんは見ていないが、今まで見た中では これが今までで一番良かった。これがある以上もうオーソドックスなものは作れない。・・と考えると キル ビルがなぜあんな風になったのか っていうのがわかるような気がする。 タランティーナは 鈴木則文作品をいっぱい見てるから。

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タンバラライ

3.5不死身の富士松、死亡…?

2023年5月26日
iPhoneアプリから投稿

矢野竜子の子分の中でもとりわけ忠実で気風がいい不死身の富士松を演じていた待田京介だが、本作ではなんと全く別の役で登場する。そもそもシリーズを通じて高倉健と鶴田浩二が全く別の役として交互に客演しているのだからこういうスターシステム的な配役は不思議でもなんでもないのだが、富士松に関しては熊虎の親分と同様に連続性のあるレギュラーキャラクターなのだから突然その存在を消去されるというのはやはり切ない。それに藤純子が待田京介に敬語を使ってペコペコ頭を下げている状況というのもなんだかおかしい。

物語は貧農vsヤクザの図式に矢野竜子とその一派が貧農側として介入するといういかにも60年代任侠映画の作風であり、ショットや演出にもこれといった見どころはない(無人の砂丘を歩く藤純子を望遠するラストカットはよかった)。ただ客演の鶴田浩二が意外にもあっさり事切れるところや、熊虎が一度は盃を交わした兄弟分を挨拶もなく斬りつけるあたりに70年代から本格化する東映の実録路線のリアリズムがほのかに香っている…のかも?

ちなみに子連れの鶴田浩二と藤純子という取り合わせは『女渡世人』にも受け継がれている。藤純子の子供に対する慈愛と怨敵に対する殺意のギャップを顕現させるものとして渡世人仲間の幼子を預かるという筋立ては好材料なのだろう。思えば緋牡丹博徒シリーズ第3作『花札勝負』でも彼女は女博徒の娘の面倒を見ていた。

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