劇場公開日 1958年1月15日

「完璧な名作です!」張込み(1958) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0完璧な名作です!

2019年11月4日
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原作 松本清張、監督 野村芳太郎、脚本 橋本忍、音楽 黛敏郎という布陣で面白く無い訳がないです
果たして期待以上の面白さ!

登場する主演男優も、ヒロインの高峰秀子も、脇役の浦辺粂子等も見事、皆素晴らしい演技です

カメラも良い映像でしかもワイド
張込みという設定を、クレーンでヒロインの日常を俯瞰するという極めて映画的な撮り方で活かしています
さらに佐賀の市内、郊外、九州の高原を美しい階調で撮っています

序盤で宿に入って聴こえてくるラジオの天気予報
良く聴くと確かに雷雨を予報してます
芸が細かいです

冒頭の長い長い列車シーンが続いてようやく張込みが始まりやっとタイトルがでます
このシーンも駅名表示や駅名をズラズラと登場人物に語らせたり、関西訛りの男を出したりして、その遠距離さを表現すると同時に、遠隔地で の捜査の大変さを私達観客に手早く飲み込ませてくれます
そして息が詰まるような変化のない張込みシーンが延々と続いた後、起承転結の転からの動きのある展開に一気に雪崩れ込むのです

空撮まで取り入れて地平線まで広がる田園地帯を走る車を追い、やがて美しい光線の溢れる高原へ誘われることで、そこで解放感を感じるのです

それはヒロインが感じている解放感を観客に理解させる為の演出でもあった訳です
この素晴らしい構成にも舌を巻きます

尾行シーンではモダンジャズ風の緊迫感のある音楽が乗ります
まるでフランス映画のフィルムノワール的な味わいを醸し出します

高峰秀子のヒロインと犯人との会話が若い刑事の抱えている心情にビシビシ突き刺さっていくシーン、そしてラストシーンの若い刑事が犯人にかける言葉は実は自分のことである二重性も素晴らしい味わいを残します

完璧な名作です!

あき240