劇場公開日 1977年7月30日

「この“HOUSE”から行って来ます」HOUSE ハウス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この“HOUSE”から行って来ます

2020年5月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

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先日亡くなった大林宣彦監督の商業映画デビュー作。1977年の作品。
なかなか見る機会に恵まれず、今回が初鑑賞。色々噂には聞いていたが、確かに聞きしに勝る。
見た人によって傑作でもあり、駄作でもあるが、間違いなくこれだけは言える。
カルト怪作!

お嬢様学校に通う“オシャレ”。
夏休みを仕事で留守の多い父と軽井沢の伯母の家で過ごすのを楽しみにしていた。が、父は再婚相手と3人で過ごそうと言う…。
オシャレは友達を誘って、伯母の家に遊びに行く事にした。

序盤はさながら美少女たちのPV。
明朗な青春モノとドタバタ漫画劇。
都会の街並みや軽井沢の風景画など背景が作画だったり、風変わりな作風はすでにこの頃から。

周りが自然に囲まれた伯母の家に到着。車椅子の伯母は嬉しそうに迎えてくれる。
…が、怪現象相次ぎ、一人一人消えていく。その度に、伯母が若返っていく。
実はすでに伯母は亡く、若返る為に彼女たちを食らう“人喰い屋敷”だった…!

まるでアサイラム作品のようなB級題材。
しかし、この異才の手に掛かれば、何とも形容し難い作品に。

この手の作品のお楽しみはスプラッター描写だが、直接的な生々しい描写や流血は避け、チープな特撮や合成で漫画チックなコミカルな表現に。
それでいて、きちんとホラーらしい生首や目玉の造形も。
スプラッターと言うより、ファンタジータッチのホラー・コメディ。
そこに、大林監督のやりたい放題を投入。
もう本当に、“怪作”としか言い様がない。

伯母には、戦時中婚約者を亡くしたという悲しい過去が。霊体となった今も待ち続けている。
本作の後に企画したのが、2017年発表の『花筐/HANAGATAMI』。反戦メッセージはすでにもう。
大林作品と言えば、美少女。池上季実子が何と初々しい。
大林監督の得意技の一つである“脱がせ屋”としても早々と。

リアルタイムで見た人はどう思っただろう。
スゲー鬼才が現れたorヘンな監督が現れた。
これから手掛けていく作品も傑作があれば、駄作も怪作も。
でも、どれを取っても誰も真似する事が出来ない唯一無二の大林作品。
その作品群はここから始まった。
だから敢えて言おう、名作であると!

近大