劇場公開日 1936年5月28日

「「祇園の姉妹」と類似した、戦前女性の生き辛さに焦点を当てた溝口監督の女性映画」浪華悲歌 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「祇園の姉妹」と類似した、戦前女性の生き辛さに焦点を当てた溝口監督の女性映画

2021年10月14日
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鑑賞方法:映画館

戦前の溝口映画の傑作とされるこの作品は、「祇園の姉妹」と共にその時期の代表作であると岩崎昶氏は指摘している。個人的には「祇園の姉妹」ほど感動はなかったが、依田義賢の緻密な脚本と溝口監督の確かな演出には感心した。山田五十鈴、梅村蓉子の演技もいい。
昭和10年代初期の現代劇で描くものは、主人公村井アヤ子の女性としての生き辛さ。生活苦と女性の身分の低さを問題として、その上で人間のエゴイズムを並べ立て、ひとり変化していくアヤ子を客観的に描く溝口演出の厳しさがある。男と女の赤裸々な欲望や嫌らしい性質をまざまざと見据える演出は力強い。家族思いのひとりの女性の、それ故に無情な世の中で遭遇する苦労を描き、ラストシーンに作者の制作意図が明確に込められた問題提起の主張が確りした映画になっている。

  1978年 6月28日  フィルムセンター

Gustav