劇場公開日 1978年10月7日

「任侠野球、ぷれいぼ~る!」ダイナマイトどんどん 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0任侠野球、ぷれいぼ~る!

2018年10月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

興奮

まるで『独立愚連隊』を彷彿させるような、これぞ岡本喜八とでも言うべき痛快娯楽作。
1978年の作品。

戦後の北九州。
昔気質の岡源組と新興の橋傳組の2大やくざの抗争がエスカレートし、問題となっていた。
そこで警察署長の提案で、民主的に解決しようと野球大会が開かれる事に…。

任侠×野球の異色ジャンルの組み合わせ。
漢気溢れる任侠の世界と熱血スポ根が見事に融合!…と思ったら、
かなりの変化球。と言うか、完全なるコメディ。

橋傳組の方は頭がキレる若頭が優秀な人材を集め、強豪チームを作っていくのだが、岡源組の方は…。
ルールも野球の“や”の字も知らない奴らばかり。唯一一人だけ、補欠でグランドに入った事あるだけ。
そんな岡源組に、プロの経験ある男が奇遇にも監督に就任。
この監督がチョースパルタ。飛んでくる球を身体で受け止めろ!…って、オイオイ。やくざたちもホントに身体で受け止めるし…。
任侠の世界じゃ文句言わせないけど、野球の事に関しては全くの素人。散々しごかれる。
THEやくざの漢である主人公の加助は、この野球が面白くない。
何が球投げ遊びじゃ! やくざならやくざのやり方で白黒付けるんじゃ!
…と言ってた加助だが、いつの間にか彼も参加する事になり、その威勢の良さでチームを引っ張る。

一応スポ根的な要素もあるが、後はとにかく何でもあり。
相手チームの投手が酒好きと知って、試合の合間合間に酒を呑ませてベロンベロンにさせる。
魔球的なのも登場!
中盤ある事情から殴り込みをして加助は大怪我を負うも、すぐ試合に復帰。
ある大事な試合では、グローブの中にメリケン、腹や脚に鉄板を仕込み…などなど。
昔のブッ飛び野球漫画を実写にしたような感じ。いや、それ以上!

派閥争い、殴り込み。男と女。
任侠映画要素もあるにはあるが、『仁義なき戦い』のようなリアリズムを期待すると、アレレ…?
皆で真面目にパロディーやってるようなやくざコメディ。

そんな中で唯一人本当にシリアスなのが、ある事情で岡源組に入ってきた銀次。
新入りだが、誰にも頭を下げないくらいの一匹狼。
野球にも参加。経験者で、誰も打てない絶対的エース。
が、加助とは常に火花バチバチ。
と言うのも、加助が惚れてる飲み屋の女将の夫。
女を巡って、殴り合いも。
そんな銀次が突然、ライバルの橋傳組に引き抜かれる。
エースを取られ、戦力を失ってしまった岡源組。
奇しくも決勝戦は、岡源組対橋傳組。
しかも岡源組は、負けたら縄張りを取られるという事実上の組消滅を約束させられてしまう…。
組の存続。
加助と銀次の決着。
文字通りの天下分け目の決勝戦。
怪我人続出、もはやルール無しのハチャメチャ試合が、プレイボール!

キャストたちが皆、熱量高めの快演。
脚本を大変気に入ったという菅原文太が豪快演技。
北大路欣也はシリアスに男の色気を発揮。
野球賭博で儲けようとする岸田森、スカした投手の田中邦衛らサブキャラもユニーク。
惜しむらくは、監督役のフランキー堺が要所要所見せ場はあったが、もうちょっと出番あって欲しかった。
キャストたちの吹替ナシの試合も必見。

実際に北九州で、野球で勝負付けたやくざの実話あるらしいが、本作はその映画化ではない。
が、血みどろの争いよりずっと平和的なナイスアイデア。
映画としては、本格的な任侠/野球モノを期待すると漫画的で物足りないかもしれないが、一応それらの醍醐味はあるし、何より面白可笑しく、豪快!痛快!
ダイナマイト級の楽しさ、面白さ。

タイトルは、岡源野球チームの気合い入れの掛け声。
ダイナマイトー!
どんどん!

近大