劇場公開日 1984年6月23日

「国民学校」瀬戸内少年野球団 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5国民学校

2023年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 敗戦前の教科書に墨塗りするシーン。その消す前の教科書を見てみたい。復員兵が上陸するなか、提督と呼ばれる男(伊丹)とその娘・武女も島にやってくる。子どもたちは純真そのものだったが、駒子は未亡人となったため、義弟の鉄夫(渡辺謙)のしつこい求愛や義父母の威圧的な態度にも困り果てていた。進駐軍が上陸し、宴会が催された晩、鉄夫に犯されてしまう・・・そんな折、戦争で片足失い、戦死したはずのを夫の正夫(郷)が島へこっそり帰ってきていた・・・ 「これを見たらわかる」と野球の硬式ボールを少年に手渡すが、駒子は「会うことはできない」と手紙を託す。

 中盤の見せ場は正夫が島へ戻ってくるところだろうか。町には居場所がないと判断し、一時は自殺することも考えたという正夫。金毘羅さんの社務所で働くことを決意するが、1年後に訪れた子供たちと駒子。すべてを受け入れるという駒子の心情の変化は時間がかかったことがうかがえるのだ。しかし、子どもたちが野球を始める頃から物語は面白くなくなってくる。武女の父親が戦犯として裁かれるため逮捕されるとか、武女の心をもっと表現してもよかったのではないか。全体的に戦後の庶民生活を描いてはいるものの、細かなエピソードが多すぎてまとまりがなくなっている。さらに、一応主人公の少年竜太の淡い初恋さえ感情移入できそうでできない。タイトルにある野球も辛く苦しいはずの戦後を明るくするだけのものだったし、アメリカのチームと試合するのにしても、相手が小学生なんだから手加減するに決まってるのをわけのわからない復讐心で描こうとしていた・・・・?

 夏目雅子の魅力満開であるけど、いったい誰を中心に見ればいいのかわからない作品。のちに公開される『少年時代』も似たようなノスタルジックな映画だったけど、さすがに『少年時代』のほうが上記の反省点を乗り越えているように思われる。

kossy