劇場公開日 1936年4月30日

「死生観」河内山宗俊 prefchibaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5死生観

2023年8月11日
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知的

何か「きれいなもの」のために死にたい、という憧れのような死生観がこの映画の根底にあるように思います。
きれいなもの、とは愛や純真無垢さ、思想、芸術など、人によりさまざまですが、自分が思った「美」のために身を捧げられるということが、死生観の一番高いところに見えた印象です。
一方、小柄を無くした家老の北村は、死を選べるはずが、切腹を口にしながらもうろたえて回避しようと保身に動きますが、金子から五十三まで生きれば出来のよいほうだと言われます。また、お静はそんな死生観を知る由もなく、お浪の純朴さに惹かれることを単に色恋ごとにしか見られません。
山中貞雄監督自身、徴兵制や戦争があった時代に生き、若くして戦病死となり自分で死に様を決められませんでした。こんな時代背景を思うと、この映画の重みを感じざるを得ませんでした。

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