劇場公開日 1964年3月14日

「死道」剣 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5死道

2018年4月30日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

三隅研次監督&市川雷蔵主演の“剣”三部作の一つ。1964年の作品。
てっきり時代劇と思っていたら、このコンビには珍しい現代劇。
とある大学の剣道部が舞台で、全国大会を目指す熱血青春ストーリー…ではない。
原作は三島由紀夫。死や悲劇など三島美学が反映された文芸作。

ひたすら剣の道に打ち込む剣道部部長・国分。自分にも部員にも厳しいが、部員から神のように尊敬されている。
ライバル的な賀川はそんな国分とは対照的で、大学生活をエンジョイ。どうしても剣道では劣る国分に反発。
全国大会を目指す夏の合宿で、事件が起きる…。

悲劇の発端は、個人的な優劣感、嫉妬…。
賀川は学内ナンバーワン女子を利用して、国分を誘惑させる。国分が禁欲を破ったと嘘をつく。
国分に無断で部員皆で禁止されている水泳をする。
もはや勝ち負けの問題じゃない。一方的な僻みだ。
確かに国分は厳しすぎる。合宿も部員がぶっ倒れるまでやる。
が、国分はただただストイックなだけで何の落ち度も無く、時にそれが相手に歪んだ感情を孕ませる。
国分は己の剣の道に勝ったのか、賀川は己の弱い心に負けたのか。

剣道シーンは白熱。
現代劇ではあっても激しい剣のぶつかり合いは時代劇にも通じ、三隅研次の演出は格調高いものすら感じる。
一切迷いが無いように見えて、その実、葛藤し…。市川雷蔵もさすがの名演。
対照的な賀川役の川津祐介も印象的。

最後に国分が選んだ道。
それは、弱いから選んだ道なのか、強いから選んだ道なのか。
壮絶な割腹自殺を遂げた三島由紀夫と被った。

近大
コーヒービートさんのコメント
2023年8月20日

「誰も判ってくれないから俺は死ぬ!」というのは原作者そのものと思いました。逆に三島はこの頃既に自分の最期を決めていたのかもしれませんね。

コーヒービート