黒蜥蜴(1968)

劇場公開日:1968年8月14日

解説

日本の推理小説界の第一人者である故江戸川乱歩の原作を、三島由紀夫が戯曲化し、それを「雪夫人繪圖(1969)」の成澤昌茂が脚色、「博徒解散式」の深作欣二が監督した舞台の映画化。撮影は「ケメ子の唄」の堂脇博。

1968年製作/87分/日本
原題または英題:Black Lizard
配給:松竹
劇場公開日:1968年8月14日

あらすじ

世界的宝石商の岩瀬は、娘早苗の誘拐と、時価一億円のダイヤ「エジプトの星」の強奪を予告する女賊黒蜥蜴におびえ、探偵明智に警護を依頼した。岩瀬父娘は大阪のホテルに姿を隠したが、隣室には岩瀬の店の顧客緑川夫人が泊っていた。実は彼女こそ黒蜥蜴だったのだ。黒蜥蜴は部下の雨宮を使って早苗をまんまと誘拐したものの、明智は機敏な処置で、早苗を奪い返したのだった。黒蜥蜴もさるもの、明智に追いつめられても慌てず、わずかな隙をみて逃走したのである。それから半月後、的場刑事率いる警察陣に守られた岩瀬邸から、早苗が忽然と姿を消した。黒蜥蜴が家政婦ひなの手引で早苗を誘拐したのだ。明智が駆けつけた時は、早苗と引換えに「エジプトの星」を持参せよ、という紙が残っているきりだった。指示通り、岩瀬は「エジプトの星」を黒蜥蜴に渡したが、早苗は戻らなかった。黒蜥蜴は早苗の美しさに魅せられていたのだ。一方、そんな黒蜥蜴にひそかに恋焦がれている雨宮は、黒蜥蜴が明智を恋していることに気づき、嫉妬を感じるのだった。その頃、明智は、一度は黒蜥蜴の手にかかって殺されたと見せかけ、部下の一人に変装して本拠地に忍び込んでいた。彼もまた、純粋な美に生きる黒蜥蜴に恋していた。黒蜥蜴を捕える自信はあったが、世間の秩序の彼方に己れの倫理を築きあげている彼女を、よく理解出来たのである。本拠地には、人間剥製の美術館があった。早苗もその一つに加えられようとしていた。雨宮はそんな早苗を助けることによって黒蜥蜴の関心を自分に向けようとしたが、捕えられてしまった。早苗の隣の檻の中で、雨宮は早苗が実は、替玉だったと知った。一方、黒蜥蜴は明智の変装を見破ったが、その時、警官隊がなだれ込んで来た。逃れぬと悟った黒蜥蜴は毒を仰ぎ、明智の腕の中で息を引きとった。好敵手と、そして不思議な美しさで人を惹きつけた恋人を失い、明智は黙然と突っ立っているばかりだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

映画レビュー

5.0 絶世の美女

2025年9月10日
iPhoneアプリから投稿

美輪明宏が美しすぎて映画を見終わったあとしばらく頭がボーっとしました
いつまでも余韻に浸っていたい
そんな映画です
今じゃこんな素晴らしい映画は作れないだろうね

コメントする (0件)
共感した! 1件)
承太郎

5.0 映像文学

2025年6月27日
iPhoneアプリから投稿

泣ける

最後泣いてしまいました
あまりにも美しすぎたから

明智先生が、人の心に敏感な人だったからもあります(もしかして、HSPかエンパスだったのかしらん…)

コメントする (0件)
共感した! 1件)
tabotyoko

5.0 年代や性別を超越した怪作

2025年6月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

この作品を観にBunkamuraル・シネマ渋谷宮下を訪ねた。                        50年前の作品ですが館内は老若男女を問わず幅広い年齢層で盛況でした。😄                          conservative? avant-garde? そういった観念に囚われていない 🧐🤔                      この空気感を醸し出しているのはやはり美輪明宏さんの存在が大きいのでは🙂                    今日は何も考えずに素直に映画を愉しむ事が出来ました。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
麻婆春雨と担々麺 大盛

4.0 妖艶な空気感に浸れる怪作

2025年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

江戸川乱歩原作の明智小五郎シリーズの一作を、三島由紀夫が戯曲化し、それを深作欣二が監督として映画化、さらに主演を務めたのが美輪明宏(当時は丸山明宏)――この錚々たる布陣を見ただけでも、本作がいかにエポックメイキングな作品であるかが分かります。今回、Bunkamuraル・シネマにて期間限定上映されていたため、観に行ってまいりました。

私は三島由紀夫のファンということもあり、彼が出演する場面に特に注目していました。噂に違わず、ナルシズム全開の姿で登場した際には、劇場内に微かな笑いが漏れる一幕もありました(笑)

さて、本作の原作は明智小五郎シリーズの一篇ですが、テレビドラマで天知茂が主演した『江戸川乱歩の美女シリーズ』と同様に、主役は「明智」ではなく「美女」。本作におけるその“美女”とは、宝石泥棒・黒蜥蜴こと緑川夫人でした。演じるのは美輪明宏。その妖艶さと存在感は圧倒的であり、本作最大の見どころとなっていました。
また、「美しさ」を永遠に保存するために生きた人間を殺し、人形として保管するという黒蜥蜴の倒錯的な趣向には、三島由紀夫自身の美意識や死生観と深く通じ合うものがあると感じられ、その意味でも、三島ファンには実に興味深い作品でした。

作品内容とは直接関係しませんが、本作が公開された1968年当時、三島は遺作となる『豊饒の海』の第2巻『奔馬』を連載中で、その舞台となったのが三輪山を御神体とする大神神社(おおみわじんじゃ)でした。そして1970年に三島が割腹自決した後、丸山明宏が三島の供養のために美輪明宏へと改名したということを思い合わせると、この作品に漂う運命的な結びつきに、何とも言えぬ感慨を抱かざるを得ません。(勿論三島と美輪の親交は、本作以前からありましたが。)

ミステリー作品としては、論理性や整合性といった面は気持ちよいほどに端折られており、そうした観点では物足りなさを感じました。しかしながら、作品全体に漂う妖艶な空気感、レトロ調の美術、まさに舞台劇のように誇張されたセリフ廻しなどに目を向ければ、それらが一体となって、実に美しい芸術作品として結実していたように思います。

そんな訳で、本作の評価は★3.8とします。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
鶏