劇場公開日 1969年10月19日

「カルト映画の矜持」江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0カルト映画の矜持

2017年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

興奮

去年、スケジュールの都合で鑑賞することが出来ずにいた今作品。何とか今年も又上映とのことで、大変嬉しかった。やはり1年期待も寝かせると益々もって勝手に頭の中での待望が膨らんでしまう。そういう意味で気持ちを修正しつつ、あまり期待値を上げないよう心掛けて鑑賞した。
上映開始日が、昭和44年だから、ほぼ産まれた年だ。そんな昔の作品だが、全てがそんな昔を感じさせない圧倒的なパワーを持ってスクリーンを埋め尽くしている。このブッ飛んだ構成、演出、カメラワーク等々は、邦画の一つの到着点だったのではないかと思いたくなる程の内容であった。勿論、カルトだから、万人は受けないと自信を持って宣言する。しかし、その可能性たるや、日本独自の叙情やおどろおどろしさ、陰を表現することの大切さが溢れている。
いわゆる、『江戸川乱歩』モノの作品であり、映画TVを問わず、沢山の映像化は枚挙に暇がない。しかし今作品はその中でも、天知茂主演のテレビ作品のベクトル上の最上位に行ってしまっているのではと、勝手にグループ分けをしてしまったのだが・・・。
多分、当時はギャグ要素としてのカットではないところでも、その比類無き『どうかしている』演出方法に館内の客の笑いが益々その精神状態の不安定さに拍車をかけていく。これは笑って良いのか、それとも悲しむことなのか、その矛盾する心を、オーバードライブさせていくストーリー展開。そしてラストシーン、多分、有名なシーンなのだろうが、もう頭がついて行けなくなる結末に、唯々口はアングリ・・・ 一体これは誰をターゲットにしているのか、否、そんなことさえ無駄な思惑である。カルトはかくありき、それを体現できた作品であった。

いぱねま