劇場公開日 1978年10月7日

「東京タワーを見上げた瞬間、ライトが点灯するあのシーンの強烈な印象はあなたの心に一生刻みつけられるはずです」鬼畜 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0東京タワーを見上げた瞬間、ライトが点灯するあのシーンの強烈な印象はあなたの心に一生刻みつけられるはずです

2020年9月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

昔、観てトラウマになった映画です
だから恐ろしくてとてもまた観る勇気を持てなかった作品です
それほどに恐ろしく、心を揺さぶられるのです

是枝裕和監督の万引き家族を観て、本作を見直したくなりました
長い長い期間をおいていたのに、その怖さは全く変わりません
筋書きも結末も全て知っていても、むしろそれだから、これからどうなるのか知っているからこそ却って余計に恐ろしいのです

三人の小さい子供達が冒頭にあどけない姿を見せた途端に、もう胸が苦しく逃げ出したい位になりました

東京タワーを見上げた瞬間、ライトが点灯するあのシーンの強烈な印象はあなたの心に一生刻みつけられるはずです

山手線や新幹線で浜松町を通りかかった時、あなたは主人公のように東京タワーを目で探してしまうようになるでしょう
そして本作のあのシーンを思い出だすのです
本作を観たその日からいつまでも
あなたのトラウマになるのです

電車の中で東京タワーを観ていたとき、もし東京タワーが点灯したら?
幸いにその経験はありません
もしそんな恐ろしいことに出くわしたなら、心臓が止まってしまうほど動揺してしまうに違いありません
フラッシュバックしてしばらく、何も考えられなくなるはずです

それ程の映画です
名作中の名作です
しかしそんな名作なのに、観るには勇気が要ります
次にまた観ようという気になれるのは果たしていつになるか分かりません
そういう映画です

鬼畜とは誰のことか?
緒形拳の演じる主人公も、岩下志麻の演じるその妻も、小川真由美の演じる不倫相手
もちろん、この三人ともそうでしょう

しかし妻も不倫相手も鬼畜に追いやったのは主人公なのです
子供に泣いて詫びても彼が本当の鬼畜なのです

長男は刑事達の言うように、それでも彼を父としてかばおうとして黙秘していたのでしょうか?
父と対面してもなお知らない人だと言い張ったのでしょうか?

彼はもはや、父を父として認めていなかったのです
だから住所や名前を言えば、パトカーで家に帰されたようにまた父に引き取られることをおそれたのです
だから逮捕されて罪人として父が自分の前に現れたときに、彼は、父をもう父ではない知らない人だと拒否したのです

万引き家族の原点は本作にあるのかも知れません

あき240