風の歌が聴きたい

劇場公開日:

解説

聴覚障害という“個性”を持つカップルが、様々な困難を乗り越えて絆を深めていく姿を描いたヒューマン・ドラマ。監督は「SADA」の大林宣彦。脚本は、実在の聴覚障害を抱える夫婦をモデルに、「三毛猫ホームズの推理」の中岡京平と「旅の涯て」の内藤忠司と大林が共同執筆。撮影を「SADA」の坂本典隆が担当している。主演は「DOORIII」の天宮良と「あした」の中江有里。文部省選定、厚生省推薦、中央児童福祉審議会特別推薦、第10回東京国際映画祭特別招待作品。

1998年製作/161分/日本
配給:ザナドゥー
劇場公開日:1998年7月18日

ストーリー

幼い頃の病気が原因で聴覚障害という“個性”を持つようになった高森昌宏(天宮良)は、今、宮古島で開催されるトライアスロンに参加すべく、スタートの時間を待っていた。一方、昌宏の妻で同じく聴覚障害という“個性”を持つ奈美子(中江有里)は、産婦人科のベッドの中で出産の瞬間を迎えようとしていた。そんなふたりが知り合ったのは、中学2年生の時だった……。福島県郡山市に的屋の息子として生まれ育った昌宏は、全国の聾学校に手紙を出し、文通相手を募っていた。そして、その相手として白羽の矢(?)が立ったのが、北海道函館市に暮らす奈美子だったのである。しかし、ロックが好きでジェームズ・ディーンに憧れる昌宏と、物静かで絵画が好きな奈美子とは、趣味も性格も正反対。程なくして、文通は途切れがちになってしまう。そんなふたりが本格的に交際を再開したのは、高校生になった時だった。北海道へ奈美子を訪ねていった昌宏は、大沼公園でデート。手話で様々なことを話していくうち、いつしか互いのことを男と女として意識するようになる。やがて、高校を卒業した昌宏は大手自動車会社に就職し、東京近郊の工場に配属された。彼が聴覚障害者のトライアスロン同好会“東京パワーズ”に入会するのも、その頃だった。一方、奈美子は札幌のデザイン学校に入学し、その才能を開花させていたが、就職活動はうまくいかずにいた。不安な毎日を送るうち、奈美子の中で昌宏という存在が大きくなっていき、遂に奈美子は両親に黙って昌宏のいる東京へと旅立ってしまう。そしてふたりは同棲を始め、やがて結婚する。その後、昌宏のトライアスロン熱が過熱してゆく中、奈美子もトライアスロンに挑戦。聴覚障害者であること、更にトライアスロンという世界を共有することによって、ふたりは愛を深めてゆくのだった。そして、その愛の結晶ともいえる子供がいよいよ誕生するのだ。宮古島でのトライアスロンを立派に完走し、函館の病院に駆けつけた昌宏は、我が子の誕生に立ち会い、これからの人生を3人で手を取り合って生きていくことを固く誓うのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0君に幸せあれ

2020年11月23日
iPhoneアプリから投稿

ろう者の語りから始まる。映画の視点が明らかである。明示的な蔑視にもあうが、それよりも周りの支援に感謝するストーリーテリング。これも本人の主観で意思なんだろう。境遇を積極的にとらえることの尊さは健常者にも同じ。その尊さに触れ、寄りそい、優しい気持ちになる。
2人へ没入してしまう。応える天宮良と中江有里の演技。中江有里の訝しがる表情や拗ねた顔に萌える一方、天宮良はこんなにうまいのかと感心しきり。年齢的には色々おかしいのだが、むしろこのまま突き通したことで、2人への思い入れが増す。あっという間の160分。幽霊も夢想もないが、どっこい充実の作品。

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Kj

4.0大林監督らしくない、秀作

2020年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

こんなことを書くと怒る人がいるかもしれませんが、大林作品らしくはありません。ファンタジーや弾けた表現は表立ってありません。誤解を恐れずに云えば、地味な作品という印象です。そしてストレートな作品です。変化球やフェイクなどが一切ない、直球勝負の映画という感じがします。テクニックではなく、作家としての誠実さ、心の透明感、そして社会への怒りが根底ににじみ出ている気がします。大林監督は、多くが余所から来た企画を映画化したものが多いそうですが、この映画はプロデューサーであり奥さんである恭子さんの立っての希望で企画されたものだと聞いたことがあります。見ていない方は多数いるかもしれませんが、もし機会があれば、観ていただきたいです。

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ゆうき権太
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