劇場公開日 2006年11月3日

「パソコン買いに行くからね。と選んだパソコンのOSがXPだったらTV版「タイヨウのうた」のパロディになりかねない。」手紙 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0パソコン買いに行くからね。と選んだパソコンのOSがXPだったらTV版「タイヨウのうた」のパロディになりかねない。

2022年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 冒頭の強盗殺人シーンで早くも涙腺決壊状態となりましたが、過失致死で無期懲役にされてしまうほど日本の裁判は歪んでしまっているのだろうかと憤りをも感じました。貧しさ故の犯行、天津甘栗の供述などがあっても情状酌量にも持ち込めない弁護士。「ひとごろし」の身内であるという理由で陰湿なイジメに遭う現状。被害者家族の苦しみだけがクローズアップされる世論の中にあって、加害者家族の苦悩を取り上げたテーマは素晴らしいことだと思いました。

 お笑い芸人を目指すという主人公の心。映画でも上手く伝えてありませんでしたけど、周囲の人たちに迷惑をかけてしまったという贖罪や、笑いのない生活から人を笑わせることによって抜け出し、一縷の希望を見出そうともがき苦しんでいる心情があったのだと勝手に解釈しました。しかし現実は甘くない。近しい人たちは彼の心を理解してくれるだろうけど、有名になってしまえばスキャンダルとして芸能界から締め出しを食らってしまう。まだ若かったために本名を隠すとか、芸能プロダクションの政治力を借りるとかいう小賢しい手段も思いつかなかったのでしょう。親友で相方の尾上寛之だってそこまで対策を考えていなかったようなので、コンビ解消も承諾するしかありませんでした。

 お嬢様である吹石一恵を好きになってしまったのは不幸なことですけど、彼女の家に招待された直後くらいに山田孝之がもっと悩むという描写が欲しいところでした。そして手切れ金を受け取るかどうか逡巡するシーンにおいて、直結はしないものの「受け取ること」イコール「お笑い芸人を辞めること」くらいの重大な転機でもあるので、描写の工夫が欲しかったです。

 テーマとなる手紙・・・吹越満も美味しいところを持っていきましたが、やはり沢尻エリカが良かった。可愛いというだけで評価されない、生きていくたくましさをも感じさせる演技力を発揮しました。ただ、関西弁を使うという設定の必要性の乏しさ。標準語を使わないことによって、逃げること、そこで生きていくこと、人と繋がりを持つことといったことを考えると、結局は関西から関東という「差別のない国」に逃げてきたことにはならないんだろうかと疑問に感じてしまいます。

 前半の要所をしめる田中要次はいいアクセントとなっていましたが、資格を取るために大検を受けてもしょうがない。誰か「大検よりも他の資格を」と教えてあげなくてはいけないと思いつつも、人知れず勉強しているのでどうしようもありません・・・誰か教えてあげてください!

【2006年11月映画館にて】

kossy
kossyさんのコメント
2022年11月22日

ゆり。さん、コメントありがとうございます。
アマプラで無料配信終了間近なので、思い出しレビューしました!
原作ではミュージシャンだったんですね・・・お笑い芸人だと、人を笑わせることができない苦悩がよく伝わってくる理由で変更したのかな?

kossy
ゆり。さんのコメント
2022年11月22日

この映画は観ていないんですが、原作は新聞連載を読みました。原作では主人公は確かロックバンドでプロデビュー直前に身元調査でバンドから外されてしまいました。彼女の方は、大阪人で世話焼きなキャラという設定だけだった気がします。映画では大阪に意味を持たせたんですね。

ゆり。