「夜の光と幸福に満ちた129分」ナイト・オン・ザ・プラネット あささんの映画レビュー(感想・評価)

5.0夜の光と幸福に満ちた129分

2022年9月24日
iPhoneアプリから投稿

5カ国、4カ国語の夜の街を堪能できる贅沢な一本。ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ、それぞれの国の夜のタクシーの中を舞台に、タクシードライバーと乗客の人間模様をユーモラスに、時にエモーショナルに綴っている。

始まりはロサンゼルスの空港。女優をキャスティングするお金持ちマダムと自動車整備士を目指す個性的な女の子のやりとりにクスッとなる。懐かしいあのアイテム達の数々に時代を感じる。

NYではドイツから来た道化師と黒人が登場。同じような帽子に変わった名前、二人の掛け合いは実に楽しい。

アフリカ出身の黒人と盲目の女性との出会いが描かれるパリのタクシーの中では、当時のフランスの時代背景や差別についてのメッセージが物語を通して訴えられている。

ローマのタクシーは、イタリア人をステレオタイプに描きすぎていてちょっと笑えない。“エロス”がテーマになっている。

ヘルシンキでは哀しみと不幸をテーマに繰り広げられる。「ちょっと思い出しただけ」のタクシーでのシーンは、このシーンから着想を得たのかしら?

バラエティー豊かな作品集、珠玉の短編小説が連なり、美しい名作になっていて、観るだけで心が満たされる。
生きているといろいろあるよね、さまざまな人がいるよね、だけど今日も地球は回ってる。夜を街を走るあのタクシーも。明けない夜はないーー。

あさ