劇場公開日 1983年

「名演技と名演出による2つの究極の選択物語が私の意識を作品の外に出ることを許さなかった」ソフィーの選択 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0名演技と名演出による2つの究極の選択物語が私の意識を作品の外に出ることを許さなかった

2023年5月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

事前に「サラの鍵」という
ユダヤ人強制収容所関連作品を観て、
強いられた選択と自ら意思での選択、
この2つの究極の選択という意味では
同じ匂いを感じるこの作品を思い出し、
改めて鑑賞した。

結末が分かっている中での
何度目かの再鑑賞の今回、
特にネイサンがユダヤ人であることを
強く認識しながら観た結果、
たくさんのシーンがエンディングに繋がって
いることに改めて気付き、
心が締め付けられる思いだった。

そして、アウシュビッツで
究極の選択を強いられたソフィーが、
戦後に下した
自らの意思での選択に号泣させられた。

この、ネイサンがユダヤ人であること、
また、彼が精神分裂症であることも
全て承知の上での選択には、あたかも
彼女一人でこの歴史の汚点全てを背負った
かのようで、戦争の悲惨さを伝えて余りある
エンディングに感じられる。

私は、
俳優の演技力で鑑賞するタイプではないが、
この作品については、
メリル・ストリーブの演技に支えられた作品
と言ってもよい程、
特に彼女のモノローグシーンは、
本来はその台詞の中の場面を
映像化したくなるところだが、
それらを必要させない見事さで、
この作品を支えている最大要素と確信出来る
アカデミー主演女優賞に相応しい
名演技だった。

アラン・J・パクラ監督の、
観客の意識が映画の外に出ることを許さない
見事な演出共々、二人にとって
これ以上の作品は想像出来ない、
原作をも見事に凌いだ
名作中の名作ではないだろうか。

KENZO一級建築士事務所