ゆれるのレビュー・感想・評価
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兄弟の良さと複雑さ
香川照之とオダギリジョーの演技が素晴らしかった。
全然違うタイプの兄弟だ。仲の良い兄弟に見えたが、田舎に帰って兄の意中の女性をあっという間にたらしこむ弟。ただ兄への面当てのような誘惑だった。この辺りも複雑な兄弟の心理が浮かんできている。
結局、殺人を犯した兄を救おうとして、反対の行動に出てしまうのだ。偽証という弟のしたことは許されない。
ところが、出所した兄は弟にかすかに笑って見せた。
この時の顔と裁判での弟の証言を聞いている時の顔は、なんとも言えない複雑な心理を表していて、香川照之の俳優としての凄さを感じた。
ただ、全体的に納得感にかけたと思う。なぜ、弟は偽証してしまったのか、父親とはいつからあんなに仲が悪くなったのかなど、この事件がおきてしまうほどの家族の背景がわからなかった。
ゆれるのは吊り橋と心。 真木よう子が吊り橋から転落死したのは事故か...
ゆれるのは吊り橋と心。
真木よう子が吊り橋から転落死したのは事故か香川による殺人か。
オダギリは当初は香川を擁護していたが、香川に罵倒されて証人尋問では「香川による殺人」と虚偽の証言をしてしまう。
その香川も一見真面目で誠実な人柄に感じられるのだが、実は自己を卑下し、キレやすいところがある。
素直に応援できない兄弟だ。
ラストは何となくハッピーエンドっぽい雰囲気にはなっていたが、もう一つすっきりしなかった。
面白かった。
何も思わず観たけれども、面白かった。
兄弟のこういう映画ってジャンルとしてあるよね。意識しだしたのはリバーランズスルーイット位からかな。もうちょっと、親のことがスパイスとしてあると尚よかった。
人間の描き方は秀逸でした
幼なじみの女性が吊り橋から墜落死した事件を巡る、兄弟の軋轢と絆を描く物語。
オダギリジョーと香川照之が共演する「サスペンス」・・・ではなく「人間ドラマ」ですね。
父親の期待を背負い、真面目に生きてきた兄。
父親に反発し、東京でカメラマンとして自由奔放に生きている弟。
母親の葬儀の為に帰郷した弟が、兄が想いを寄せる幼馴染と関係を持ったことから、二人の関係もゆれていきます。
抑圧されてきた兄の不満が迸る様子は、迫力があり画面に引きつけられます。
ただ、もしこのストーリーを作るのであれば、「兄が想いを寄せる幼馴染」をもう少し見せた方が、より説得力を感じたのではないかとも思います。
ラストも少し辻褄があいません。豹変した兄に不利な証言をする弟。しかし、実は女性は自ら落ちたことを目撃していて・・・悔恨の念にかられます。しかし、この設定なら、そもそも最初から「自分で落ちた」「兄は助けようとした」と証言をするはずで、「観ていない」という証言は腑に落ちません。
人間の描き方としてはとても良く出来た映画だったので、少し残念に感じました。
ほぼほぼ
全員勘違い。
オダギリくんじゃなきゃ観てなかった。
映画をよく観るよく知ってる人ならこれは評価高い映画と思わなきゃいけないテイストの映画ね。そうやってノリや真似で映画監督も上手くなっていくのかもしれません。誰のせいでもない。
ゆれるゆれる
事前情報なしで鑑賞。
全員がそれぞれの想いの中で揺れてる。吊り橋も揺れてる。
見始めたときは「香川照之にこんな良い人な役似合わないな〜」と思ったけど、やっぱり裏のある役だった(笑)
しっかしすごいな〜。
最後のあの笑顔は香川照之にしかできないな。
恨めしい笑いにも、含みのある笑いにも、純粋な喜びから来る笑いにも見える。あんな表情できないね。
兄弟であるが故の苦悩
家業(ガソリンスタンド経営)や両親、親戚付き合いなど全てを兄に任せ、独り東京で写真家として自由に生きる猛をオダギリジョーさんが、そんな弟を羨みながらも、ただ真面目に実家のガソリンスタンドで働く稔を香川照之さんが熱演。お二人の魅力溢れた演技に、ラスト迄引き込まれました。
幼馴染の智恵子を、真木よう子さんが初々しく演じていた。
大人になり兄弟で抱えるものが違ってくると、色々なわだかまりが生じ、互いに心を許し話す事が難しくなってしまうものかも知れません。
裁判が進むに連れ、互いが胸に秘めていた思いをぶつけ合い、感情を揺さぶられ苦悩する猛の姿が、重く印象的な作品でした。
30代でこのような深い苦しみを描いた作品を世に出された西川美和監督の才能に、改めて驚かされました。
劇場の2Fで西川美和監督が、並ぶファンの方々ににこやかな笑顔でサインをされている可憐なお姿を拝見出来た事、本当に幸運でした✨
映画館にて鑑賞
西川監督作品、迫力に圧倒、脇役にも光る俳優陣
「すばらしき世界」を観て感動し、他の西川監督作品を観たくて借りて観ました。
2作目とは思えない、すごい迫力を感じました。
人の記憶はその時の感情で曲がる、そう考えると裁判も自白も人が発した証言も、すべてが無になってしまう。そう思えてしまいました。
それだけに、状況証拠や人の言葉だけを信じて裁くというのは、注意しなければならないと思いました。
兄弟とは、子供の頃から一緒遊んで成長すると、いつしかお互いのことを妬んだり、羨んだり、糸が絡んでしまうのか。だけど、この作品ではラストシーンでちゃんと光が見えてくる。私には希望の光に見える。
【”兄ちゃん、家に帰ろうよ・・” 西川美和監督のオリジナル脚本のレベルの高さ、映像カッティングの見事さに驚嘆した作品。】
■今更ながらであるが、下記、作品内容に触れています。
ー 恥ずかしながら、初見時の感想は”平和な日々に潜む狂気”であった。
だがその後、西川監督の諸作品を鑑賞するたびに、
”この稀有な才能を持った方は、人間の善性を信じ、映画を製作される方なのだ・・。”
という想いを持つに至った・・。ー
■感想
・序盤、且つて猛(オダギリジョー)と付き合っていた智恵子(真木よう子)が、久しぶりに二人の故郷の田舎町のガソリンスタンドで、出会うシーン。
猛の、智恵子に気付きながらも、気づかないふりをしてガソリンスタンドを後にする姿。
そのガソリンスタンドは、猛の父(伊武雅刀)が経営しており、35歳で独身の冴えない兄稔(香川照之)が働いていた・・。
- 初見時には、この時点で完全に西川監督の脚本にミスリードされていた・・。-
・そして、且つて猛や智恵子や稔たちが、父に連れられて、屡、行っていた峡谷の吊り橋のシーン。
- ここでも、西川監督は決定的なシーンを敢えて写さずに、観る側に判断を委ねる。私は、見事にミスリードされた・・。-
・稔は確かに、”鬱鬱とした感情”を抱えつつ、単調な日々を過ごしていたのだろう。且つては弟の恋人であった智恵子と共に・・。
そして、弟、猛は自分とは違い、都会で成功した写真家として、活躍していることも重々知りつつ・・。
それは、智恵子も同じであった・・。彼女の部屋に置かれた猛の写真集。
”何で、私は貴方と一緒に行かなかったのかな・・”というセリフ。
・そして、始まった稔の殺人容疑の裁判。稔に有利に進んでいた裁判であったが、猛の証言により・・、形勢は逆転する。稔の穏やかな微笑み。
<稔は、確かに智恵子に対し、吊り橋上では、”ある思い”がよぎったのであろう。だから、自ら罪を認めたのであろう・・。
だが、稔は幼き猛(稔の腕に残る傷)や、智恵子に対して、確かに、助けの手を差し伸べていたのだ・・。
今春も、この稀有な才能を有する監督の作品「すばらしき世界」が公開された。
人間性肯定の視点に立った素晴らしき映画であった。
寡作な監督ではあるが
ーそれは、非常にレベルの高い「オリジナル脚本」で勝負しているからである。ー
次作を待望している。
「分福」で、若き邦画監督の育成を是枝裕和監督と共に行う姿勢も含め、敬服している監督のお一人である。>
西川美和の代表作
すごい!兄弟の心理描写。タイトル「ゆれる」の通り、吊り橋も揺れたのかもしれないけど、オダギリジョーと香川照之のゆれる思いが見事。まるでスクリーンから客席の間の空気に心が浮かんでいるような雰囲気に包まれていました。だけど、深層心理というか彼らの真実がどこにあるのかと、掴もうとすると逃げていってしまうような・・・だけど、兄思い、弟思いという両者の熱きものが胸に突き刺さってくるような・・・絶望と希望も紙一重なんだと最後にはわかり、人を信ずることの大切さも改めて教えてくれました。
序盤から、何気ないショットだけど凝ったカメラアングルがポイントを押さえ、事件の中心となる吊り橋現場での葛藤、目撃、濁流と緊迫感を生み出す編集効果が目に焼きついてしまう。空白となった智恵子落下シーンは最後まで彼らの記憶に閉じ込めてしまうのです。「あの瞬間、実際には何が起こったんだ」と観客をストーリーにのめり込ませ、オダギリジョーと真木よう子の関係を香川照之がどう感じているのかと疑問を投げかけてくる。裁判が始まるまでの一連の流れにどっぷりとハマると、もう西川美和監督の術中に陥ってしまう仕組みとなっていました・・・
「吊り橋」と「ゆれる」という言葉が映画の中でも様々なことを象徴していましたが、あまりにも揺れすぎたため若干の謎も残してしまいます。問題となった現場は猛にはどんな風に写っていたのか・・・彼がカメラマンということもあって、見た目そのままと思われがちですが、現像し終わってからはその写真を見た印象が人によって違うもの。兄が真木よう子との関係を気づいていたと理解した瞬間から、弟のゆれていた記憶が「兄が突き落とした」と確証に至ったのではないでしょうか。
それにしても香川照之の演技は上手すぎる。弟への猜疑心を胸に秘めながら、殺人者としての今後のことを真剣に悩む。清廉潔白であることよりも罪滅ぼしのために投獄されることを望むといった自暴自棄の精神状態。面会中、弟を「人を信じない奴」と突き放す言葉だって、自ら弟とは絶縁状態にしてもいいと罪滅ぼしの一環だったのかもしれない。そして、法廷での弱々しい彼の演技はそうそう真似できるものではないのでしょうね。
形見分けとか遺産相続についてもサイドストーリーがあるような気がしてならないのですが、父・勇(伊武雅刀)と伯父(蟹江敬三)との会話で「兄さんだけいい思いをして・・・」という勇の言葉にあるように、大学は出してもらって弁護士となった兄とGSという稼業を継いだ弟がその息子たちに違った道を選ばせたという比較が面白そうです。ちなみに香川照之が東大出身ということも・・・
【2006年10月映画館にて】
撮る動機の強さ。
再々…見。
接見、法廷と映画的見せ場多めでリアルに仕上げつつ映らない曖昧さをこそ撮る西川美和の動機の強さと手際を改めて評す。
不気味な内面の多重を軽々と顔だけで演る 香川照之は脚本演出の冴えもあり頭一つ出る。
怒鳴りで魅せる蟹江敬三を偲ぶ。
また見る。
【心の奥底に潜むのもの】
今、この作品を見返してみても、ぼくの心の奥底に潜む闇のようなものや、弱さがつまみ出されるような感覚を覚える。
従順で真面目な稔。
自由な猛。
実は卑屈な稔。
兄の弱さを見透かす猛。
智恵子を想う稔。
智恵子を愛してもいないのにセックスする猛。
智恵子を追う稔。
智恵子を突き放す猛。
智恵子の転落死をきっかけに二人の向き合い方は変わったように思えたが、稔も猛も、事件どころか、率直にお互い向き合おうとしない。
どこか牽制しあって、間合いに踏み込めず、中途半端な状態が続くようだ。
最後、猛の証言がウソであったことが、フラッシュバックするように明らかになる。
なぜ…。
この疑問がずっと付き纏う。
この理由は、観る人、それぞれに、それぞれの過去や経験に、委ねられているのではないのか。
ずっと考える続けるように要求しているようだ。
稔はバスに乗ったのだろうか、それとも、止まっていたのだろうか。
これも、観る人、それぞれが違うシーンを思い浮かべているに違いない。
自分の心に向き合うことになる作品だ。
橋と兄弟
話は橋の上から兄の経営するガソリンスタンドの店員である女性が落ちてしまった。一緒にいた兄が突き落としたのか、それとも事故かというメイン。
兄はその女性が好きだけど、葬式で里帰りした弟とねんごろになった女性はその気はないし、兄の方もはっきりと告白したりしない。高い所が苦手な兄が、橋を先に渡っていった弟を追う女性を止めようと追いかけてその時落ちてしまった。
取り調べを受けて、最初は弟の方から事故という方向で人脈も使って押し出していくが、時間が経つにつれて素直で人の良い兄が事件のことは早く忘れたいという素振りを見せ始める。
女性が亡くなって間もないのに、出所してからの未来を語る兄が変貌したように見える弟は、裁判で一転し「兄が突き落とした」という証言をして、兄は刑務所行きというもの。
ラストは刑期を終えた兄に会いに行く決心をして、バスに乗ろうとする兄へ、幼い頃のように「兄ちゃん」と叫んで呼びかける。
そこで兄がバスに乗って行ってしまったか、待っていたかは観客に任せるという終わり。
見終わった感想としては役者演技が素晴らしい。特に兄役の香川照之の演技。正座して洗濯物をたたむ小さな背中だけでちょっとしたメッセージになる。
弟役のオダギリジョーの山での足運びも自信のある人間という感じでとても良かった。
繊細な演技だった。
映像にも静かで繊細な人々の暮らしが随所に盛り込まれていていい。
けれどガソリンスタンドの男性店員が、弟を責めたり激励するための配役でしかなく、これまで細やかに(これまで歩んできた背景がそれぞれあるような感じで)描写されてきた人間像が後半急に無くなる。
話の内容はもう少し踏み込んでほしかった。兄弟が相対したか、相対したとして何を話したか、二人はどんな気持ちで、これからどうなっていくのか、など観客への、想像していい展開のゆだね幅が大きすぎる。
一つの作品として作り手の答えをもう少し示してほしかった。
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