劇場公開日 2006年12月1日

「【”必死、即ち生きる剣なり” この作品には、確かな下級武士たる漢の生き様と、強い絆で結ばれた夫婦の姿が描かれている。】」武士の一分(いちぶん) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”必死、即ち生きる剣なり” この作品には、確かな下級武士たる漢の生き様と、強い絆で結ばれた夫婦の姿が描かれている。】

2022年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

悲しい

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幸せ

ー 一時期、この映画サイトで木村拓哉さんの演技を酷評するレビューが幾つか挙げられた時期がある。木村さんの所属していたグループの解散騒動の頃だったと記憶する。
  私は、そのグループには全く興味が無かったが、この方が主演していた映画は観ていた。
  今作のイメージが有ったのかもしれないが、映画の感想は世間の雑念とは切り離したいモノだと思った記憶がある。
  但し、今作の木村さんの演技は、私が観た中でもベストであるとは思う。-

◆感想<Caution! 内容に触れています。>
 - 内容は巷間に流布しているので、簡潔に記す。-

・お毒見役を命じられた剣の達人、三村新之丞(木村拓哉)が、”ツマラナイ仕事だ・・。”と不満を妻加世(檀れい:不老の方である・・。)に不満を漏らすシーン。
 - 加世が、夫の事を総て見通している事が分かるシーンでもある。-

・そんな、三村が赤ツブ貝の、毒に当たり視力を失っていくシーン。
 - 毒見係の主たる侍(小林稔侍)は切腹する。それまで、太平の世で、お毒見役など無意味な存在と思っていたので、少し驚いた。”目黒のサンマ”の落語が好きだったので・・。ー

・石高、僅か30石の三村家の存続が危ぶまれた時に、下された処置。それは30石を減ずることなく養生しろという、沙汰であった。
 - 驚き、且つ喜ぶ三村と関係する人々。だが、加世のみが憂いを隠せない。眼が視えずとも、妻に異変に気付いた三村が、中元徳平(笹野高史)に調べさせた事。それは、加世が家のために、藩頭であった島田(坂東三津五郎:良く、あの役を受けたなあ・・。)に身を任せていたという事実であった。
 即刻、加世を離縁する三村。涙ながらに従う加世。-

・更に、三村は島田が、自分の家の存続を考えた上での妻への行為ではなく、単に幼き頃から加世の美しさに惹かれていた島田の自分の欲望だったと知った時に、彼の怒りは静に沸騰する。

・三村は且つての師匠木部(緒方拳)に、稽古を付けてもらい、”必死、即ち生きる剣なり”という言葉を賜る。
 - 盲目になった三村を演じる木村さんの「セント・オブ・ウーマン」で盲目の中尉を演じたアル・パチーノのように、全く瞳を動かさない演技に瞠目する。-

・三村と、島田の真剣での決闘シーン。島田は三村を攪乱させようと、あばら家の屋根に上り、鞘を放り投げ切りつけるが、察した三村の剣に腕を深く傷つけられる。
 - 島田の奢りと、三村の決死の思いの違いが出たシーンである。

<ラスト、家に帰った三村は徳平が連れて来た女中の作った食事を食する。直ぐに誰が作った食事か気付く三村。女中を呼び優しき声で語り掛ける三村。”この煮物の味は、お前にしか出せぬ。”
 夫婦の固き絆が、再び取り戻されるシーンである。佳き、時代劇であると思う。>

NOBU