劇場公開日 2003年11月8日

「気まずいけど、愛おしい」阿修羅のごとく 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0気まずいけど、愛おしい

2013年10月23日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

泣ける

笑える

幸せ

向田邦子の名作を森田芳光が映画化した2003年の作品。

タイトルの“阿修羅”の意味から始まる。抜粋すると…

インド民間信仰上の魔族。外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、内には猜疑心が強く、日常争いを好み、互いに事実を曲げ、また偽って他人の悪口を言い合う。怒りの生命の象徴。争いの絶えない世界とされる。

これほど巧いタイトルは無いと思う。恐れ入る。

突然父の不倫を知った四姉妹の悲喜こもごも。
父の秘密を知った訳だが、四姉妹もそれぞれ隠し事アリ。
他人には知られたくない。特に、姉妹には。
いくら姉妹であっても、女は女。女の意地。
ここが、男兄弟だと分からない所。
姉妹として、妻として、女としての可笑しい所、哀しい所、醜い所を終始気分良く見れたけど、もし姉妹同士で見てたら、チクチク胸刺さって物凄く気まずいんだろうなぁ…。馬鹿な男兄弟で生まれて良かった(笑)
だからと言って、姉妹同士で見たら、ただ嫌な気分になるだけではない。気まずいけど、愛おしい。そんな気分。

大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子。
これだけの面子が揃って何も起こらない訳が無い!現場では、想像出来ぬほどの女優同士の火花が散った事だろう。それが見事なまでのアンサンブルを作り上げている。
姉妹の老いた父母を演じた仲代達矢と八千草薫の両ベテランはさすがの一言。特に、何も言わぬけど女として姉妹より一枚上手の母・八千草薫には頭が下がる。
出番は少ないが、桃井かおり、木村佳乃も印象的。大竹しのぶvs桃井かおりは見てるだけで怖や怖や…。黒木瞳vs木村佳乃もなかなか。
中村獅童、小林薫も好演しているが、やはり女の映画である。

感情、表情、仕草に至るまで、一つ一つの機微を取りこぼさず描き上げた森田芳光の演出は称えずにはいられない。
2000年代の森田作品では間違いなく最高作。

近大