「圧巻の傑作」陪審員2番 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻の傑作
映画館で観られる機会は訪れそうにないので、仕方ないので配信で観た。近年のイーストウッド作品の中でもかなりよくできた部類に入る作品ではないかと思った。特殊な見せ方は何一つしていない、しっかりした本を用意して、しっかりとキャスティングをして、しっかりと撮影する。揺れる天秤などメタファーも実にシンプルで奇をてらったものではないわけだが、出てくるタイミングが絶妙なので、すごい効果的だ。話の運びのテンポもいいので、全然ダレることがなく最後まで緊張感を持って見れてしまう。
真実は藪の中、ならぬ真実は雨の中、という作品なのだけど、目隠しされた女神の天秤像はアイロニーにも見えてくる。「見かけにとらわれずに偏見を持たず、お金や権力にも左右されずに公平に真実をジャッジするということを象徴」するのが目隠しされた正義の女神像なんだが、目が見えない=視界不良の激しい雨の中、という意味にも思えてくる。
ニコラス・ホルトの終始不安そうな眼つきがすごく良い。一方のトニ・コレットの目力は力強くて、自分に間違いはないといい自信に溢れているように見える。このイメージが最後まで映画を緊張感を与えていて、キャスティングって本当に重要だよなと改めて思った。
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