劇場公開日 2025年1月31日

「「満ち足りた家族」と好対照な、貧しい兄弟の絆と運命」Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「満ち足りた家族」と好対照な、貧しい兄弟の絆と運命

2025年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

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悲しい

韓国発「満ち足りた家族」、香港発「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」そしてマレーシア・台湾合作の本作と、アジア映画の力作、良作の日本公開が続く。兄と弟の関係性が物語の鍵になっている点で「満ち足りた家族」と共通する。ただし、あちらが弁護士兄と医師弟という上流の兄弟の確執が優勢だったのと対照的に、この「Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり」では、身分証を持たずスラム街で暮らす貧しい兄弟の絆が哀しくも美しい。

台湾の俳優ウー・カンレンが演じたろう者の兄アバンのキャラクターがしみじみと素晴らしい。不良の弟を常に気にかけ、トラブルに巻き込まれても決して見放さない。ゆで卵を互いの頭にぶつけて殻を割るシーンが微笑ましくて、ちょっと哀しい。それから、2人が乗った長距離バスが休憩所に停まったときの出来事が印象的で、長編初監督・脚本のジン・オングによるストーリーテリングのうまさに感心。

観光で訪れただけではまず知り得ないマレーシアの最下層という暗部を題材にした映画で、画面もかなり暗めだが、国境を越えて琴線に触れる普遍性が確かにある。邦画では藤元明緒監督作「海辺の彼女たち」と近いものを感じた。

高森 郁哉