リバー・フェニックスへのオマージュも披露された、パリのガス・バン・サント展 : 佐藤久理子 Paris, je t'aime

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コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第35回

2016年5月25日更新

リバー・フェニックスへのオマージュも披露された、パリのガス・バン・サント展

パリのシネマテーク・フランセーズ(www.cinematheque.fr)でガス・バン・サントの展覧会が開催中だ。本人の意向が反映された映画監督の展覧会は、それぞれの個性が如実に感じられて興味深い。ティム・バートン展のときは、映画に使った小道具や衣装が展示され、まるでテーマパークのような楽しさで、会場全体がマジカル・ワールドの再現となっていた。昨年のマーティン・スコセッシ展は、いかにも映画愛好家の彼らしく映画に特化した、ストーリーボードや脚本、他の映画人との交流を示すレターや映像が紹介された。今回はそれらに比べると、映画のみならず写真や絵画も手がける、現代アーティストとしてのバン・サントの一面が色濃く出たものになっている。

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特にウィリアム・バロウズやアレン・ギンズバーグらに影響を受けて育った彼の、1950年代のビート・カルチャーとの関連性がフォーカスされている。開催にあたって彼が寄せた言葉は、ガス・バン・サントという映画作家の本質を知る上でとても興味深い。彼はこう記している。「ストーリーと抽象性の狭間におけるテンションは、わたしの映画にとって本質的なものです。というのも、わたしはむしろ画家が作る映画から学ぶことが多かったからです。彼らの映画という領域における仕事、そのルールにとらわれないやり方から学んできました。わたしにとって、映画業界で言われる、これをやるべき、あるいはやるべきではない、というようなルールはまったく問題ではありませんでした。それは現在の映画作りにおいても変わっていません」

最初の展示は、モノクロの写真群だ。初監督作のときからつねにポラロイドに役者を収めてきた彼のコレクションが公開されている。そのなかには、まだ初々しいジェイク・ギレンホールキアヌ・リーブスマット・デイモンなどの姿もある。たんにカメラに収めるだけではなく、バン・サントはそれをバロウズの言うカットアップからインスパイアされ、コラージュにもしている。

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続いては、この監督のとりわけ実験的な作品とそのスタイルに焦点を当てた部屋。「ドグマ映画」と彼が呼ぶ初長編の「マラノーチェ」、死についての4部作と言われる「GERRYジェリー」「エレファント」「ラストデイズ」「パラノイドパーク」を通してみる映像スタイル。とくに面白いのはこの監督の場合、いわゆるストーリーボードの代わりに、まるでグラフィックの図解のような方法で、カメラの動きが提示されていること。故ハリス・サビドやクリストファー・ドイルなど、ユニークな撮影監督と仕事をしてきた映像哲学が感じられる。

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そして今回の見どころのひとつでもある、「マイ・プライベート・アイダホ」のコーナー。撮影中に撮られたブルース・ウェーバーによる、リバー・フェニックスキアヌ・リーブスの親密なポートレートが、あらためて見るとせつない。ちなみに本展に合わせて開催された特集上映では、「マイ・プライベート・アイダホ」の未公開フッテージを混ぜてバン・サントとジェームズ・フランコが共同監督したリバー・フェニックスへのオマージュ作品、「My Own Private River」も披露された。

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さらに監督自身の絵画作品、音楽とのつながりを紐解くPVなども紹介されている。バン・サントはオープニングにシネマテークを訪れ、一般向けの映画講座を開催。アメリカ映画という地平のなかで、ハリウッドとインディペンデントのあいだを行き来しながらも、つねに異色なポジションを保ち続けるその作家性をあらためて認識させた。展覧会は7月31日まで開催されている。(佐藤久理子)

[筆者紹介]

佐藤久理子

佐藤久理子(さとう・くりこ)。佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

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