客席が回る新劇場でのアトラクション的演劇体験に大興奮! : 若林ゆり 舞台.com (2)

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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第56回

2017年6月1日更新

第56回:客席が回る新劇場でのアトラクション的演劇体験に大興奮!

この「ステージアラウンド」の日本上陸は、テレビ以外の事業部門で大きなプロジェクトを展開したいというTBSの方針と、オランダでオープンした新しい劇場が面白いという情報が出合ったことで始まった。

「オランダのその劇場では2010年から『女王陛下の兵士』というミュージカルを上演しているんですが、いまだにチケットが入手困難なほど大ヒットを続けている。『言葉では伝えづらい面白さだ』というので見に行くと、なるほどいままでにない劇場体験を味わえる、これはやってみる価値があるということで始動しました」と、松村支配人。

このとき、客席が回るというシステムは、想像以上にいろいろな効果を生み出せると確信したという。

「なかなか伝わりにくいのが歯がゆいんですが(笑)、客席に座って、開演して初めて『ああ、こういうことね』とわかる面白さなんです。たとえばオランダの公演では海を渡るシーンがあって、舳先がスクリーンに対して上下に揺れる。すると、客席は左右にしか動いていないのに上下に動いているような錯覚を覚えます。そこから生まれる浮遊感も面白かった。それから、舞台で人が動くと同時に同じ方向に回転することで、独特の距離感とスピード感が生まれるんですね。客席は約8メートルという高さのスクリーンで覆われていて、テント小屋のような囲まれ感もあって。『あ、こういうことができる劇場なんだ』とワクワクしました」

捨之介役の小栗旬 捨之介役の小栗旬

プロジェクト始動にあたって、最初から「劇団☆新感線にやってもらえれば」という目算があったことは想像に難くない。しかし新感線のプロデューサーや関係者らが次々とオランダでの観劇を果たす中、いのうえだけはなかなかオランダまで行ってくれなかったという。

「なにしろ飛行機がお嫌いで(笑)。いろいろ高いハードルもありますからやることに関しても悩んでいらっしゃったんですが、最終的には『自分以外の人間がこの劇場を日本で最初に演出しているのを見たら、きっと悔しいだろうな』ということで決意していただけました」

ここから、さまざまな苦労、試行錯誤を重ねてこぎ着けたオープンだった。

「この舞台のシステムはオランダで作ったものを持ってきているんです。それを組み立てるのもオランダ人で、日本に来て作業をしてくれたんですが、文化の違いがありますから大変でした。日本人の労働時間の長さや勤勉さを説明してもなかなか理解されないし。とくにステージを振動もなく、スムーズに回転させるための調整がものすごく大変でした。こんな調子で初日の幕が開けられるのかとハラハラしましたが、無事に開いたときはオランダ人たちも感動していましたね」

日本で初めてのシステムゆえに、演出家にとっても俳優たちにとっても稽古場ではわからない、実際に劇場に入って回してみないとわからないことだらけ。

「劇場に入ってから、開幕直前の変更が大変だったでしょうね。これは続く“鳥”や“風”にも生かされていくとは思うんですが、なにしろ最初ですから。舞台転換のときにスクリーンの映像や芝居をどう繫いでいくかが、いのうえさんはいちばん苦労したと言っていました。でも、ふたを開ければ『そこまでやりますか!』というこだわりっぷりで(笑)。俳優たちは体力的にもキツかったはずです。お客さまは客席が回ってくれるからこの場面から次の場面へ何もしないで行くことができますよね。でも役者たちは、この場面のセットから次のセットへ、大回りしてすごい長距離を走って行かなければならない。しかもはける方向を間違えたら大変だし、着替えなんかあると楽屋を経由するのでさらに長距離を走ることになるから、そりゃもうみんな体力の消耗が激しくて。その上、殺陣もある。古田さんは舞台上をある方法でスイスイ移動しているのですが (笑)。いろんな意味でずるい演出です」

“Season花”(上)と“Season鳥”(下)のイメージ写真 “Season花”(上)と“Season鳥”(下)のイメージ写真

6月27日から開幕する“Season 鳥”では阿部サダヲが主人公の捨之介を演じるが、会見で中島かずきは「いままで見たことのない捨之介になっていて、登場人物たちの関係性も変わってくる。全然違う作品として観られるし、我々が“花・鳥・風・月”をどう展開していくか、この作品でわかってもらえるはず」と自信を見せた。どうやら阿部サダヲバージョンの捨之介は忍者らしい!? 衣裳やセットの色彩・装飾、演出そのものも大きくチェンジするという。

「“鳥”は前例があるから楽な部分もあるものの、阿部さんはプレッシャーもあると言っていました。同じようにやるわけじゃないし、超えていかなきゃいけないから。きっとさらに面白いものになると思います。この劇場は土地契約の都合で、いまのところ2020年までの期間限定。『髑髏城の七人』のあとには新感線以外の公演もあるかもしれませんが、未来の成功があるとすればこの公演のおかげですから、ぜひ見逃さずに楽しんでほしいです」

「髑髏城の七人」Season鳥は6月27日から9月1日、IHIステージアラウンド東京(豊洲)で上演される。詳しい情報は公式サイトへ。

http://www.tbs.co.jp/stagearound/

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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