客席が回る新劇場でのアトラクション的演劇体験に大興奮! : 若林ゆり 舞台.com

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コラム:若林ゆり 舞台.com - 第56回

2017年6月1日更新

第56回:客席が回る新劇場でのアトラクション的演劇体験に大興奮!

2017年の春、日本の演劇界に衝撃が走った。豊洲に新設された劇場、IHIステージアラウンド東京のこけら落とし公演として、劇団☆新感線による「髑髏城の七人」Season花が開幕。これがもう、想像を絶するほどの興奮を生みだし、まったく新しい演劇体験をもたらしてくれるすごい公演なのだ!

IHIステージアラウンド東京という劇場が、とにかく斬新極まりない。劇場空間の中央にある盆の上に360度回転する1300あまりの客席があり、それをぐるりと取り囲むようにして、4つのステージとそれをつなぐスクリーンがでーんと構えている。場面が展開する度に客席が回り、スクリーンの開閉を経て次のセットへと移行するという仕組みだ。オランダで2010年に幕を開け、大ヒットを続けているこのシステムの独占使用料をTBSが取得して建設。独自のエンターテインメントを乗せて発進したというものなのである。

この大胆なアイデアに満ちたステージシステムを、これ以上生かせる演劇集団はほかにあるまい。このステージを見た人なら誰もが心からそう思わずにはいられないのが、座付き劇作家・中島かずき、演出家・いのうえひでのりが牽引する劇団☆新感線だ。その新感線が1990年の初演以来、再演を行って磨きをかけてきた“いのうえ歌舞伎”の代表作が「髑髏城の七人」。これを今回は“花・鳥・風・月”という4つのシーズンに分け、それぞれのキャストに合わせて脚本や演出を変え、この舞台のための趣向を凝らして1年3カ月にわたるロングラン上演をするという形になっている。

Season花の舞台より。捨之介役の小栗旬と無界屋蘭兵衛役の山本耕史(左から) Season花の舞台より。捨之介役の小栗旬と無界屋蘭兵衛役の山本耕史(左から)

トップバッターの“Season 花”では、戦国の世、織田信長を失って迷走する3人の男を小栗旬山本耕史成河という豪華キャストが熱演。初演で主役を務めた古田新太ら個性豊かな俳優たちが脇を固めている(沙霧役でアクションを見せる清野菜名も好演!)。

この新鮮・驚愕・胸躍りすぎる演劇体験を、一体どう説明すればいいのだろう? 実際に体験しなければ、すべてを理解するのは無理。しかもネタバレしてしまってはせっかくの驚きも半減してしまう。ということで、さわりだけのレポートに加え、TBSテレビ事業局・IHIステージアラウンド東京の松村恵二支配人にうかがった新劇場の裏話をお届けしよう。

まず、この劇場のいちばんの特徴である「客席が回転する」ということ。これがものすごく意外なことだったのだが、最初のうち「回っている」という感覚がほとんどない! とくに1幕は、あまりにも動きがスムーズなため、まるで舞台の方が回っているかのような感じなのだ。しかし次第に「回っている」感じが自覚できるようになり、そうすると物語世界に入り込んでいる、という感覚がより楽しめるようになる。

ステージアラウンドの回る客席 ステージアラウンドの回る客席

そして「意外なこと」その2が、360度の舞台なのにパノラマ感を敢えてあまり出していない、ということ。割と間口を狭く使ったこの演出には、いのうえ独自の狙いが隠されている(これがラストにものすごいカタルシスをもたらしてくれる!)。しかしCG映像を駆使した世界の打ち出し方、タイトルが出るシーンのカッコよさ、本水を使ったセットなど、劇団☆新感線が舞台で繰り広げるダイナミズム、荒々しさ、ケレン味、人間くさいドラマ性、スピーディな展開というすべてが、この劇場の特性にガチッとはまった感じは圧巻である。舞台から舞台へ、回っている間のスクリーンを使った演出がまた見事で、舞台上の人々と一緒に疾走しているような、まるで自分が回しているような感覚もあって面白い。テーマパークのアトラクション感とはまったく違う、新しいアトラクション感だ。

[筆者紹介]

若林ゆり

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

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