ジョン・ランチベリー : ウィキペディア(Wikipedia)
ジョン・ランチベリー(John Arthur Lanchbery、1923年5月15日 - 2003年2月27日)は、イギリス・ロンドン出身の作曲家・指揮者である。主にバレエ音楽の分野で活躍し、舞台の指揮やバレエ音楽の編曲で名高い『バレエ音楽百科』400頁。『バレエの情景』88-89頁。。
生涯
1923年にロンドンで生まれ、8歳からヴァイオリンのレッスンを始め、作曲を手掛けるようになった。奨学金を受けて王立音楽アカデミーへ進んだが、第二次世界大戦の勃発によって中断せざるを得なくなった。学業に戻った後、アングロ・ソビエト音楽新聞(Anglo Soviet Music Press)という音楽出版社でアルバイトに従事したNadine Meisner (2003-03-03). "Obituary: John Lanchbery" 。
25歳のとき、メトロポリタン・バレエ団ロンドンを拠点にして1947年から1949年の間のみ活動したバレエ団。ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場バレエ団とは異なる。『オックスフォード バレエダンス事典』543頁。の音楽監督に就任し、2年間その地位を務めた『オックスフォード バレエダンス事典』576頁。。1951年、同年に死去したコンスタント・ランバートの後任としてサドラーズ・ウェルズ・バレエ団の指揮者となり、1960年から1970年まで、ロイヤル・バレエ団の首席指揮者を務めたジョン・ランチベリー氏訃報 新国立劇場ウェブサイト、2011年12月10日閲覧。。1972年から1978年にかけてオーストラリア・バレエ団([[:en:The Australian Ballet]])の音楽監督、1978年にアメリカン・バレエ・シアターに移籍して1980年まで音楽監督を歴任した。その後はフリーランスの立場となって、世界各地でバレエ音楽の編曲家や舞台の指揮者として活動した。
ランチベリーは、オペラ作品のバレエ化(ホフマン物語、メリーウィドウ、こうもり)を手掛けた最初の人物だった。1960年代には映画音楽の作曲に関わり、1977年にはハーバート・ロス監督作品『愛と喝采の日々』の音楽を担当した。また、無声映画の伴奏音楽として、D・W・グリフィス監督の『國民の創生』(1915年)、ジョン・フォード監督の『アイアン・ホース』([[:en:The Iron Horse (film)]]、1924年)の2作を手掛けている。
ランチベリーはバレエ指揮者として評価が高く、編曲者としても優れていた。バレエ音楽の録音にも取り組み、ウィーン交響楽団との『白鳥の湖』(ヌレエフ演出版による同名映画のサウンド・トラック盤)やフィルハーモニア管弦楽団との『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』などを指揮した『バレエの情景』92頁。バレエ映画『白鳥の湖』 2011年12月10日閲覧。。
私生活においては、オーストラリア出身でサドラーズ・ウェルズ・バレエ団のプリンシパルを務めていたバレエダンサー、エレイン・ファイフィールド(Elaine Fifield、1930年10月28日 - 1999年5月11日)と結婚して1女を儲けたが、1960年に離婚した『オックスフォード バレエダンス事典』426頁。Obituaries Elaine FifieldThe ballerina who created Pineapple Poll Mary Clarke The Guardian, Monday 31 May 1999 01.56 BST Article history ガーディアンウェブサイト、2011年12月10日閲覧。 。1991年には大英帝国勲章を授与された。その後2002年にオーストラリアの市民権を取得し、メルボルンに定住した。彼はその地で2003年2月27日に死去している John Lanchbery -- gave new life to ballet music March 05, 2003|By Los Angeles Times 2011年12月10日閲覧。。
主な作品
年 | 作品名 | 原作曲者 | 備考 |
---|---|---|---|
1955 | 小鳥の家(House of Birds) | フェデリコ・モンポウ | ケネス・マクミラン振付(ロイヤル・バレエ団)『バレエ音楽百科』122-123頁。 |
1960 | ラ・フィユ・マル・ガルデ | フェルディナン・エロルド他 | フレデリック・アシュトン振付(ロイヤル・バレエ団)『バレエ音楽百科』394-397頁。 |
1964 | ザ・ドリーム | フェリックス・メンデルスゾーン | フレデリック・アシュトン振付(ロイヤル・バレエ団)『バレエ音楽百科』231頁。 |
1966 | モノトーンズ | エリック・サティ | フレデリック・アシュトン振付(ロイヤル・バレエ団)LP『モノトーンズ』(ジョン・ランチベリー指揮ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団)ライナーノーツ(1979年、東芝EMI、三浦淳史) |
1966 | ドン・キホーテ | レオン・ミンクス | ルドルフ・ヌレエフ振付(オーストラリア・バレエ団) |
1970 | プロメテウスの創造物 | ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン | フレデリック・アシュトン振付(ロイヤル・バレエ団)『バレエ音楽百科』400-401頁。 |
1971 | The Tales of Beatrix Potter | マイケル・ウィリアム・バルフ、アーサー・サリヴァン | フレデリック・アシュトン振付(バレエ映画)1992年にコヴェント・ガーデンで舞台化されている。『オックスフォード バレエダンス事典』475頁。 |
1972 | ホフマン物語 | ジャック・オッフェンバック | ピーター・ダレル振付(スコティッシュ・バレエ団)『オックスフォード バレエダンス事典』501頁。『バレエ音楽百科』348頁。 |
1975 | メリー・ウィドウ | フランツ・レハール | ロナルド・ハインド振付(オーストラリア・バレエ団)『オックスフォード バレエダンス事典』371頁。『バレエ音楽百科』385頁。 |
1976 | 田園の出来事([[:en:A Month in the Country (ballet)]])『田舎の一か月』と訳されることもある。 | フレデリック・ショパン | フレデリック・アシュトン振付(ロイヤル・バレエ団)『オックスフォード バレエダンス事典』328頁。『バレエ音楽百科』29頁。 |
1977 | 愛と喝采の日々(映画音楽) | - | ハーバート・ロス監督 |
1978 | うたかたの恋(マイヤリング) | フランツ・リスト | ケネス・マクミラン振付(ロイヤル・バレエ団)『オックスフォード バレエダンス事典』514頁。 |
1980 | ラ・バヤデール | レオン・ミンクス | ナタリア・マカロワ振付(アメリカン・バレエシアター) |
1988 | ノートルダム・ド・パリ | エクトール・ベルリオーズ | ロナルド・ハインド振付(ヒューストン・バレエ団) |
1991 | ラ・バヤデール | レオン・ミンクス | ルドルフ・ヌレエフ振付(パリ・オペラ座バレエ団) |
1997 | ドラキュラ | フランツ・リスト | ベン・スティーブンソン振付(ヒューストン・バレエ団)『オックスフォード バレエダンス事典』338頁。 |
1998 | 雪娘 | ピョートル・チャイコフスキー | ベン・スティーブンソン振付(ヒューストン・バレエ団とアメリカン・バレエシアター)『オックスフォード バレエダンス事典』554頁。 |
2000 | ラ・バヤデール | レオン・ミンクス | 牧阿佐美振付(新国立劇場バレエ団) |
参考文献
- 小倉重夫編 『バレエ音楽百科』 音楽之友社、1997年。ISBN 4-276-25031-5
- デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル 『オックスフォード バレエダンス事典』 鈴木晶監訳、赤尾雄人・海野敏・長野由紀訳、平凡社、2010年。ISBN 978-4-582-12522-1
- 福田一雄 『バレエの情景』 音楽之友社、1984年。ISBN 4-276-37038-8
外部リンク
- John Lanchbery (1923–2003) インターネット・ムービー・データベース 2011年12月10日閲覧。
- John Lanchbery - Royal Opera House ロイヤル・オペラ・ハウス 公式ウェブサイト、2011年12月10日閲覧。
- Australia Dancing - Lanchbery, John (1923 - 2003) 2011年12月10日閲覧。
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