エレナ・フェッランテ : ウィキペディア(Wikipedia)
エレナ・フェッランテ(、、1943年4月5日Elena Ferrante4 - )は、イタリア人作家のペンネームである。フェッランテがイタリア語で書いた作品は各国語に翻訳されており、「ナポリの物語」シリーズが代表作となっている"End of author's anonymity". Toronto Star, November 1, 2016. Page E1. Jonathan Forani.。
2016年には、『タイム』誌の世界で最も影響力のある100人に選出された。 __TOC__
執筆活動
フェッランテは作品の中で最も知られているのは、ナポリ出身の少女2人の人生を描いた4部作「ナポリの物語」シリーズである。4部作は2011年に刊行された『リラとわたし』()に始まり、2012年刊行の 『新しい名字』("Storia del nuovo cognome")、2013年刊行の 『逃れる者と留まる者』("Storia di chi fugge e di chi resta")、2014年刊行の 『失われた女の子』("Storia della bambina perduta" )と続くもので、最終作はストレーガ賞やブッカー賞にもノミネートされた。またこの本は、2015年の『ニューヨーク・タイムズ』紙が選ぶ10冊に選出された。日本では早川書房からシリーズ全4作が出版されている。
フェッランテは、「本というものは、ひとたび書かれたら、作者の必要など無いのです」と発言している。彼女は、自身の匿名性が最初からの条件であること、また名前を明かさないことが執筆の鍵であることを繰り返し主張している。
初めて英語に翻訳された作品は "Delia's Elevator" と題された短編で、アドリア・フリッチが翻訳を担当し、2004年のアンソロジー "After the War" に収録された。作品はタイトルロール・デリアの母親が埋葬される日を描いたもので、彼女が育ったアパートの古いエレベーターを訪れるシーンがある。
匿名性
世界的に名を知られる作家でありながら、フェッランテは処女作を刊行した1992年以来、自身の匿名性を貫いている。彼女は2015年のストレーガ賞ノミネートの際も匿名を貫いた。2003年に刊行されたノンフィクション作品 "La Frantumaglia" は、フェッランテ自身が作家としての経験について語り、彼女と編集者との文通が書籍化されたが、作品は彼女の正体にわずかな光を当てた(作品は2016年に英訳されたきりである)。この一方で、2013年の『ザ・ニューヨーカー』の記事において、批評家のは、収集した手紙から彼女について広く受け入れられている認識をまとめた。
2016年3月、イタリアの小説家・言語学者で、ペトラルカ・ダンテ学者かつピサ大学教授のマルコ・サンタガタ()は、フェッランテの正体について自説を公表した。彼の論文ではフェッランテの著作が言語学的に分析され、小説内でピサの街並みが詳述されていること、作者が現代イタリア政治に精通していることが指摘された。これらの情報から、サンタガタは作者にピサ在住経験があり1966年にこの街を離れたと結論付け、1964年から1966年までピサで学んでいたナポリの教授、マルチェッラ・マルモ()こそフェッランテだと特定した。一方、マーモも出版社も、彼の説を明確に否定している。
2016年10月、調査報道記者のクラウディオ・ガッティが記事を発表し、不動産決済や印税支払などの金融記録から、ローマに拠点を置く翻訳家のアニータ・ラジャ()こそフェッランテだと報じた。ガッティの記事には、出版界から、プライバシーの侵害だとの批判が数多く寄せられた。イギリスの作家であるマット・ヘイグは、「『本当の』エレナ・フェッランテを暴こうとするのは恥ずかしくて意味も無いと考えてくれ。作家が実際にどんな人物かは、本人が書いた本が教えてくれる」とツイートした。一方で、フェッランテの来歴に関する情報には価値があると評価する者もいた。2016年10月には、イタリアの虚報記者であるトンマーゾ・デベネデッティが、スペインの日刊紙『エル・ムンド』のウェブサイトにラジャが自身がフェッランテだと認めた旨を公表したが、フェッランテ自身の出版社によってすぐに否定されている。
翻案・映像化
フェッランテの著作のうち2作品が映画化されている。"L'amore molesto"(英題:"Troubling Love")はマリオ・マルトーネによって『』(1995年)として長編映画化され、また "I giorni dell'abbandono"(英題:The Days of Abandonment")は同名映画としてロベルト・ファエンツァ監督で映画化された。
32話からなる「ナポリの物語」ドラマシリーズは、イタリア放送協会 (RAI)・HBO共同企画、イタリアの制作会社ワイルドサイド・の共同制作で製作・放送中であり、2018年にシーズン1の8話、2020年にシーズン2の8話が、2022年にシーズン3の8話が放送された。フェッランテも脚本に名を連ねた。
2020年に出版されたLa vita bugiarda degli adulti (英訳: The Lying Life of Adults)はNetflixによって『嘘にまみれた大人たち』(The Lying Life of Adults)のタイトルでドラマシリーズ化され、2023年1月4日より配信予定である。
作品
- 1992年 - L'amore molesto
- 英訳 -
- 2002年 - I giorni dell'abbandono
- 英訳 -
- 2003年 - La frantumaglia
- 英訳 -
- 2006年 - La figlia oscura
- 英訳 -
- 2007年 - La spiaggia di notte(英訳 - The Beach at Night)
- 2011年 - L'amica geniale(『ナポリの物語』第1巻)
- 英訳 -
- 日本語訳 -
- 2012年 - Storia del nuovo cognome, L'amica geniale volume 2(『ナポリの物語』第2巻)
- 英訳 -
- 日本語訳 - 『新しい名字』、飯田亮介訳、早川書房〈ナポリの物語〉、2018年5月17日、624頁。ISBN 978-4152097637
- 2013年 - Storia di chi fugge e di chi resta, L'amica geniale volume 3(『ナポリの物語』第3巻)
- 英訳 -
- 日本語訳 - 『逃れる者と留まる者』、飯田亮介訳、早川書房〈ナポリの物語〉、2019年3月20日、527頁。ISBN 978-4152098467
- 2014年 - Storia della bambina perduta, L'amica geniale volume 4(『ナポリの物語』第4巻)
- 英訳 -
- 日本語訳 - 『失われた女の子』、飯田亮介訳、早川書房〈ナポリの物語〉、2019年12月19日、600頁。ISBN 978-4152099075
- 2019年 - L’invenzione occasionale
- 英訳 - Incidental Inventions
- 2020年 - La vita bugiarda degli adulti
- 英訳 - The Lying Life of Adults
受賞歴
- 2016年 - 『タイム』誌・タイム100(世界で最も影響力のある100人)
- 2016年 - ("The Story of the Lost Child"、ノミネート)
- 2016年 - - 金メダル(フィクションの部、"The Story of the Lost Child")
- 2014年 - Best Translated Book Award("The Story of the Lost Child"、翻訳)
注釈
出典
参考文献
- "Anita Raja a Tommaso Debenedetti: Yo Soy Elena Ferrante" on El Mundo, Madrid 10-12-2016
発展資料
- Buonanno, Elda. La Frantumaglia: Elena Ferrante's "fragmented self" Ph.D. thesis, City University of New York, 2011.
- Milkova, Stiliana. "Mothers, Daughters, Dolls: On Disgust in Elena Ferrante's La figlia oscura". Italian Culture 31:2 (September 2013).
外部リンク
- (書評)
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/07/19 09:24 UTC (変更履歴)
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike and/or GNU Free Documentation License.