司修 : ウィキペディア(Wikipedia)

司 修(つかさ おさむ、1936年〈昭和11年〉6月25日 - )は、日本の小説家、画家、装丁家、エッセイスト。産経児童出版文化賞を受賞3回、芥川賞候補にもなっている。法政大学名誉教授。

略歴・人物

群馬県前橋市出身。太平洋戦争末期1945年(昭和20年)8月5日、犠牲者535人を出した米軍による前橋空襲総務省|一般戦災死没者の追悼|前橋空襲追悼碑に9歳で遭遇し、「広島に原爆が投下された前日。焼け野原の街で実感したのは絶望より『もう戦争はない』という喜び」を心の原風景として、「何もない環境から探し出す生活で、雑草を食べ孟宗竹を裂いて家も建て」て、「生きる執着心をたたき込まれた」定年時代/東京版/平成27年6月下旬号

中学校を卒業後、映画看板師(映画館に設置の宣伝看板の絵を描く仕事)の助手として働きながら、絵を独学。24歳のとき画家を志し上京したが、力不足を痛感し絶望。そんなの折、同じ群馬出身で「日本近代詩の父」と呼ばれた詩人の萩原朔太郎の詩『死なない蛸』を読み、「薄暗い水槽の底で孤独と飢えに耐えるタコ。自らの足や体を食べ、最後に肉体は消滅してしまうが、その憤りや精神力は永遠に生きていく。その詩を読んだ時、自分の絶望感がちっぽけに思え」て、人生観を変えた。

言葉の持つ力に感動した結果、絵本や装丁の仕事も始める。そこで野間宏大江健三郎武田泰淳三島由紀夫ら有名作家の著作本の装丁に携わる装丁家・司修さん 「本の重みで床が3回抜けた」|日刊ゲンダイDIGITAL日刊ゲンダイ2016年11月11日うち、「現代文学を読み解き、他者の問題を自分に引き付けて考えるようになった」。そして、自身も執筆活動を始めた。そして「描くことへの貪欲さ、『目に見えないものをいかに表現するか』という絵の姿勢も完成した」。

年譜

  • 1950年(昭和25年) - 中学校(新制)卒業
  • 1953年 - 映画館の看板描きの助手として働きつつ、独学で絵を描き始める
  • 1964年 - 主体美術協会の設立に参加
  • 1976年 - 『金子光晴全集』の装丁で第7回講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞
  • 1978年 - 『風船乗りの夢』で小学館絵画賞、『はなのゆびわ』で第27回小学館児童文化賞を受賞
  • 1980年 - 『私のアンネ=フランク』(松谷みよ子作)で日本児童文学者協会賞を受賞日外アソシエーツ現代人物情報
  • 1982年 - 『雪の夜の幻想』(いぬいとみこ作)で第29回サンケイ児童出版文化賞
  • 1986年 - 「司修の世界展」(静岡・池田20世紀美術館)読売人物データベース
  • 1988年 - 『バー螺旋のホステス笑子の周辺』で第100回芥川賞候補 『まちんと』ライプツィヒ国際図書デザイン展金賞
  • 1989年(平成元年) - 『河原にできた中世の町 へんれきする人びとの集まるところ』(網野善彦文)で再び第36回産経児童出版文化賞美術賞を受賞
  • 1993年 - 『犬(影について、その一)』で第20回川端康成文学賞を受賞
  • 1995年 - 司修展(東京・新宿、紀伊国屋画廊)
  • 1999年 - 法政大学国際文化学部教授
  • 2000年 - 第35回造本装幀コンクール日本印刷産業連合会会長賞
  • 2003年 - 『ぼくの良寛さん 鶴見正夫少年詩集』で3度目の第50回産経児童出版文化賞(ニッポン放送賞)
  • 2005年 - 法政大学名誉教授
  • 2007年 - 『ブロンズの地中海』で第48回毎日芸術賞を受賞
  • 2008年 - 『山をはこんだ九ひきの竜』で第55回産経児童出版文化賞美術賞を受賞 河北倫明賞(2008両洋の眼展で)朝日新聞人物データベース
  • 2011年 - [展覧会]群馬県立近代美術館 司修のえものがたり-絵本原画の世界、『本の魔法』で第38回大佛次郎賞を受賞
  • 2013年 - 「賢治+司修 注文の多い展覧会」(神奈川近代文学館)
  • 2016年 - イーハトーブ賞受賞司 修 名誉教授が「イーハトーブ賞」を受賞 :: 法政大学 - 法政大学2016年07月28日

著作

  • 『はずかしがりやのぞう』 こぐま社、1968年
  • 『証人 影像戯曲 憂鬱工房』 こぐま社 1970年
  • 『ちびっこわにのぼうけん』 偕成社 1971年
  • 『魔女の森』 サンリオ出版 1975年
  • 『おとうさんだいすき』 文研出版 1975年
  • 『不思議な館』 サンリオ 1977年
  • 『風船乗りの夢』 小沢書店 1978年
  • 『4つのバトンタッチ』 司真実共著 小峰書店 1980年
  • 『壊す人からの指令 司修画集 小沢書店 1980年
  • 『ウィグルの砂漠とオアシスを往く 司修素描集』 中西画廊 1980年
  • 『描けなかった風景』 河出書房新社 1981年
  • 『汽車喰われ』 福武書店 1983年 (短編小説集)
  • 『青猫 幻想童話館』 東京書籍 1985年
  • 『魔法のぶた』 汐文社 1985年 原爆児童文学集
  • 『夢景色 司修幻想旅行記』 東京書籍 1985年
  • 『歩いてきた風景』 講談社 1985年
  • 『気ままなる旅 装丁紀行』 筑摩書房 1986年
  • 『赤羽モンマルトル 河出書房新社 1986年
  • 『紅水仙』 講談社 1987年 のち文庫(小説)
  • 『語る絵』 小沢書店 1989年
  • 『幽子・愛』 講談社 1990年
  • 『夢は逆夢』 白水社 1990年 物語の王国
  • 『奏迷宮』 河出書房新社 1991年
  • 『ブッダの歩いた道』 法蔵館 1992年
  • 『戦争と美術』 岩波新書 1992年
  • 『影について』 新潮社 1993年
  • 『夢の中の遠い声』 法蔵館 1993年
  • 『迷霧』 講談社 1993年
  • 『司修 描くことと書くこと 開館1周年記念特別企画展 司修展図録』 前橋文学館 1994年
  • 『リンゴ わらべうたによる』 ほるぷ出版 1994年
  • 『イーハトーヴォ幻想』 岩波書店 1996年
  • 『賢治の手帳』 岩波書店 1996年
  • 『幸福を求めて』 新書館 1997年
  • 『近代化遺産への旅』 伊藤幸雄撮影 上毛新聞社 1998年
  • 『版画』 新潮社 2000年 (小説)
  • 『いのちのえほん』(編)群馬県・童心社 2001年
  • 『アスカ』 ポプラ社 2004年
  • 『「雁の寺」の真実』 水上勉共著 朝日新聞社 2004年
  • 『月に憑かれたピエロ』 河出書房新社 2004年
  • 『ブロンズの地中海』 集英社 2006年
  • 『プロヴァンス水彩紀行』 時事通信出版局 2006年
  • 『影について』 講談社文芸文庫 2008年
  • 『おばあのものがたり』 偕成社 2008年
  • 『戦争と美術と人間 末松正樹の二つのフランス』 白水社 2009年
  • 『蕪村へのタイムトンネル』 朝日新聞出版 2010年
  • 『100万羽のハト』 偕成社 2011年
  • 『司修のえものがたり』 トランスビュー 2011年
  • 『本の魔法』 白水社 2011年 のち朝日文庫
  • 『孫文の机』 白水社 2012年
  • 『絵本の魔法』 白水社 2013年
  • 『幽霊さん』 ぷねうま舎 2014年
  • 『Ōe(おおえ):60年代の青春』 白水社 2015年

挿画

  • 『愛と性をめぐる変奏』中村真一郎
  • 『あかげのゆきおとこ』杉山径一
  • 『サーカス物語』ミヒャエル・エンデ
  • 『まちんと』松谷みよ子
  • 『さるのひとりごと』松谷みよ子
  • 『三日月村の黒猫』安房直子
  • 『コンスタンティノープルの渡し守』塩野七生
  • 少年少女世界の名作19『秘密の花園』バーネット

関連人物

  • 大江健三郎(小説家) - 多くの著作の装丁を、司が手掛けている
  • 中山庸子(エッセイスト・イラストレーター)
  • 中沢静雄(小説家・文芸評論家・児童文学者)

関連項目

  • 日本の小説家一覧
  • 児童文学作家一覧

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/09/17 23:39 UTC (変更履歴
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