リアル・アバター、ヴァーチャル・フィギュア…“人間の存在そのもの”が揺らぐ 映画「本心」リアルな“近い将来”とは
2024年9月12日 12:00
平野啓一郎原作の傑作長編小説を池松壮亮主演、石井裕也の監督・脚本で映画化する「本心」の新場面写真が、このほど公開された。同作に登場する「リアル・アバター」や「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」など、テクノロジーの進化の先で待ち受ける“近い将来”を切り取っている。
本作は、今からさらにデジタル化が進み、“リアル”と“ヴァーチャル”の境界が曖昧になった少し先の将来が舞台。急逝した母が実は“自由死”を望んでいたことを知り、その母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせるという、未知の領域に足を踏み入れた青年・石川朔也(池松)と、彼を取り巻く人間の“心”と“本質”に迫る革新的なヒューマンミステリーとなっている。
2019年に新聞連載が開始され、21年に出版された原作小説「本心」。当時は2040年代を舞台にした“未来の物語”として描かれていた。 しかし、現実では想像を超える速度でテクノロジーが発展。映画の舞台設定もあわせて「今から地続きの少し先の将来(始まりは2025年)」へと前倒しされた。
現に“亡くなった人をAIで蘇らせる”サービスはアジア各国で既にビジネス展開されており、多くの論争を生んでいる。また、主人公・朔也の仕事“リアル・アバター”も、日本ではコロナ禍以降、急速に普及した“UberEATS(ウーバーイーツ)”の延長線とも言えるだろう。もはや、私たちの生活に定着しつつある“リアルな日常風景”と呼べるかもしれない。
場面写真では、主人公・朔也が、依頼人に身体を貸し出し“リアル・アバター”として働く姿や、“VFゴーグル”の向こう側に映る“ヴァーチャル・フィギュア”の母親などが写し出されたシーンなどを切りとっている。ここからは“ヴァーチャル・フィギュア”“リアル・アバター”の詳細な説明を行っていこう。
最先端のAI(人工知能)、AR(添加現実)の技術を組み合わせながら、仮想空間上に外見だけでなく会話もできるように再現された“人間”とその技術。これまでのライフログ、メールのやり取り、写真、動画、ネットの検索履歴などの情報をAIが集約することで生成され、日々学習を続ける。
朔也は”自由死”を望んでいた母の本心を知るため、VF技術を開発した技術者・野崎将人(妻夫木聡)に依頼し、AIで母親を蘇らせる。最初こそ不安を抱いていたものの、まるで本当に生きているかのようなVFの母親、そしてひょんなことから同居することになった生前の母親の親友・三好彩花(三吉彩花)と共に、他愛もない日常を取り戻していく。しかしVFは徐々に“息子の知らない母親の一面”をさらけ出していく。
自身のカメラ付きゴーグルと依頼者のヘッドセットを繋ぎ、遠く離れた依頼者の“身体”となって、要望を叶える職業。依頼人はアバターに指示を出すことで、疑似体験が可能となる。
ある事故をきっかけに昏睡状態に陥り、目覚めたころには職場がロボット化され、失業に追い込まれた朔也。そんなとき、幼馴染の岸谷(水上恒司)の紹介で、渋々始めたのがリアル・アバターの仕事だった。病室から動けず、最期の時間を思い出の地で過ごしたいと願う若松(田中泯)からの依頼をはじめ、様々な顧客による際限のない要求、時に悪意のある理不尽な命令が、次第に朔也の心を錯乱させる。
「本心」は、11月8日からTOHO シネマズ日比谷ほか全国で公開。
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