【「ゴーストバスターズ アフターライフ」評論】最もシンプルかつ普遍的なかたちへ進化を遂げた80年代大ヒット作の遺伝子

2022年1月30日 08:00


「ゴーストバスターズ アフターライフ」
「ゴーストバスターズ アフターライフ」

すべては時が解決してくれる。これほど強くそう感じたことはない。何年も何十年も続編の噂が浮かんでは消えていったが、結果的に本作は誰もが納得する幸福な形へ落ち着いた気がする。勝因はやはり、経過した時間をそのまま物語へ投影させたこと。そうやってお馴染みの面々からいったん焦点をずらし、30年後の世界を生きる一人の少女の目線へと寄り添ったことだろう。

彼女の名はフィービー(マッケンナ・グレイス)。シングルマザーのもとで兄と共に育つも、都会での生活が立ち行かなくなり、一家そろって祖父が遺した田舎町の古びた屋敷へ越してきたばかり。ここで様々な仕掛けや地下研究所を見つけたことで、フィービーは初めて祖父の正体を知る。彼はその昔、ニューヨークをゴーストたちの手から救った伝説の4人組の一人だったのだ──。

本作はノスタルジーを最初からひけらかしたりはしない。少女がいつしか自分と祖父との共通点に気づき、初めて「知りたい」と自発的に手繰り寄せていく心境を大切に描く。この過去と現在との向き合わせ方が巧みなのだ。

何より心くすぐるのは、ヒロインのあらゆる表情に、故ハロルド・ライミスが演じた天才科学者イゴン・スペングラーの遺伝子が感じられることだろう。風にそよぐ巻き髪。メガネの奥で好奇心たっぷりに笑う瞳。祖父の情熱を引き継いだ彼女が小さな体と魂を躍動させる姿を見ていると、微笑みと共に熱いものがこみ上げてくる。

また、旧シリーズを率いたアイヴァン・ライトマンの息子ジェイソンが監督を務めるだけあって、“想いを受け継ぐ”というテーマがフィクションを超え、現実とリンクしているように感じられるのも極めて面白い点だ。

この父子の演出はかなり違う。かつて笑いの最前線をゆく芸達者たちの有機的な化学反応を活写したのがアイヴァンなら、今回のジェイソンはまずドラマをしっかりと立ち上げ、登場人物たちの感情を丁寧に紡ごうとする。一見、両作は真逆の味わいに思えるかもしれない。でも心配は無用。たとえアプローチは違っていても、やがて作品の核たる部分でそれぞれの想いがギュッと結びついていく様を、我々は噛み締めることができるはずだから。

まさか「ゴーストバスターズ」が家族の物語に進化するとは思いもしなかったが、言うなればそんな予測不能なところも同作ならでは。試行錯誤の果て、かくもシンプルかつ普遍的な強度を持った一作へ辿り着いたことを祝福したい。

(牛津厚信)

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