ウダイ・フセインの元“影武者”が「デビルズ・ダブル」を語る
2012年1月13日 15:45
[映画.com ニュース] イラクの独裁者だった故サダム・フセインの息子で、“悪魔”と呼ばれたウダイに影武者を強要された男の運命を描く「デビルズ・ダブル ある影武者の物語」。同作の原作者で、“影武者”本人のラティフ・ヤヒア氏に話を聞いた。
92年に執筆以来、その驚くべき内容に映画化のオファーが殺到しながら、20数社を蹴り続けた理由を「アメリカのプロパガンダとして利用されたくなかった」とヤヒア氏は語る。CIAへの協力を拒否したことにより、亡命後の生活に多くの制限が設けられている実情(パスポートを所持できない、ビザの発給に制限があるなど)もあり、「私の人生を支配したウダイから逃れたというのに、どうしてまた同じ“強要”を受け入れなければならないのでしょうか」と、アメリカに対する思いは複雑なようだ。
だが、03年にオランダの製作会社のオファーを受け入れ、自身も作品にアドバイザーとして参加。リー・タマホリ監督、ドミニク・クーパーの主演により、「もちろん脚色はあるが、70%は事実と自負している」という作品が完成した。
「訴えたいのは“歴史から学んでほしい”ということ。家族であれ、友人であれ、たとえそれが政府だとしても、自分の人生が他人の手によって支配されることがあってはならないのです。何者にも強要されることなく自由に生きてほしい、という願いを作品に込めています」
「お気に入りのシーンは?」と尋ねると、「少し暴力的なシーンですが……ラティフがウダイを暗殺しようとするところ」とニヤリ。タマホリ監督に勧められて出演したシーンがあるそうで、「長い廊下を渡って、ラティフがウダイに初めて会いに行くシーン。隣を歩くボディガード役が私なんです」と明かした。
劇中では、ウダイの支配を逃れ、亡命に成功するラティフ・ヤヒアだが、彼のその後はどうなるのだろうか。「“西側諸国には自由と人権がある”と信じ込まされていたんですね。結局、それを見つけることはできませんでした。イラク時代に、その後15年間の私の生活がどうなるかを教えてもらっていたら、ウダイに殺されることを望んでいたと思います。そうすれば、少なくとも私の墓は故郷のイラクに残るわけですから」
現在は人権擁護団体のメンバーでもあるヤヒア氏。自由を求める戦いは、依然として続いている。
「デビルズ・ダブル ある影武者の物語」は、1月13日より全国公開。