「素晴らしいが、今やる話ではなかったと思う。」僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト ToTさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0素晴らしいが、今やる話ではなかったと思う。

2024年8月20日
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鑑賞方法:映画館

アニメ本編を見てるだけの人の感想です。原作勢にとって的外れだったらごめんなさい。

誤解のないように言っておくが、映画自体は素晴らしい映画だと思う。

ヴィラン側の背景が見えないという批判があるが、彼らはそもそも背景もへったくれもないただの犯罪集団の暴走形態なので、描かれないのは当然。誰しもがAFOのように壮大な背景を持ってるわけではない。

ジュリオ、アンナも王道の恋物語が展開され、特にジュリオの献身は必見。

ストーリー、作画、A組の一致団結、出久爆豪轟の共闘と見どころしかない作品ではある。

ではなぜここまで評価が落ちたか。私も肩透かし感がなかったわけではないので真剣に考えた。

おそらく「今じゃなかった」んだろうと思う。

今回のラスボスは、「オールマイトに心酔し、曲解し、都合よく力を欲したただの小物」だが、現在のヒロアカアニメ本編は「オールマイトという平和の象徴からの卒業期」に入っているような気がする。

デクは雄英全寮制化の段階ですでにオールマイトを追うだけの男ではなくなり、今現在はオールマイトだけでないOFA歴代継承者の全てを背負って立ち上がっている。

今残っている他ヒーローたちは(雄英生含む)、オールマイトがおらず、多くのヒーローが挫折した中、AFO死柄木という最強最悪のヴィランへ命をかけて立ち向かっている。

一般市民は、平和の象徴を担ぎ上げる舞台の観客者だけであることをやめ、手と手を取り合って自らの足で必死に生きようとしている。

つまり現在のヒロアカは「平和の象徴がいらない世界」を頑張って作ろうとしているように見える。

この「一般市民」には我々、現実世界の視聴者も含まれると思う。我々もなんとなくどこかで「オールマイトはもういないこと」を受け入れ、「オールマイトがいないから、出久を始めとしたみんなで戦うしかないんだ」と理解しているのではないだろうか?

そんな中で「オールマイトの次は俺」「俺が次の平和の象徴」と言われても、さすがに今さら感がすごいのは仕方がない。そのフェーズは、もう終わったんじゃないだろうか。と思った。

例えばオールマイト引退の直後の話で(AFOとの戦いの直後)、この映画を出して、オールマイトを失い混乱する中にダークマイトが現れ、一般市民の期待からダークマイトが脚光を浴び、本当にオールマイトの代わりになろうとする。そんな中で緑谷出久はダークマイトとオールマイトの違いから反逆。自らもともにオールマイトからの卒業を意識して、偽オールマイトを乗り越えていく。

そんな話だったら、もっと映画の評価は高かったような気がする。

人々がまだオールマイトを必要としてる時に、オールマイトの代わりが現れれば、ダークマイトはもっと大きな敵に感じたんじゃないだろうか?

素晴らしい映画だが、時代が合わなかった。
と私は感じた。

ToT