「原作・TVアニメの盛り上がりに水を差す、水準以下の映画」僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト hayaokiさんの映画レビュー(感想・評価)
原作・TVアニメの盛り上がりに水を差す、水準以下の映画
この映画については予告を見たときから期待していた。予告では、映画オリジナルのキャラクターであるダークマイトが、原作やアニメでも重要な名台詞である、「次は君だ」に対して、「私があなたの跡を継ぐ」と応える。ダークマイトは映像の中のオールマイトに、胸に手を当てうやうやしく敬礼をする。デクとはまた違った形の"オールマイト信奉者"が敵役となることで、信念のぶつかり合いや、ヒーローとしての葛藤など、新しい展開が見られることを期待させた。
しかし、蓋を開けてみれば、ダークマイトのそういった背景は、「ぽっと出の映画オリジナルキャラクターをデクたちが敵視してやっつけるための理由付け」でしかなく、物語のかなり早い段階で、「お前なんかニセモノだ!」といった具合に否定される。"デク以外のオールマイトの後継者"という格好の題材を、こうも簡単に、呆気なく消費してしまったことに、心底落胆した。
そういった根幹のテーマ以外も、上映時間をもたせるためのカサ増し的な展開が目立った。A組メンバー全員を表舞台に出す必要があったのか、疑問が残る。夢を見せる個性を持つ敵に翻弄される場面など、もっと深掘りしたら面白くなりそうな展開もあったが、味方側の人数が多い分、細切れカットの繋ぎ合わせになりがちだった。市民の避難誘導だとか、ダツゴクの警戒だとか、何かしら理由を付けてメインとなる登場キャラクターを絞ったほうが良かったように思う。
原作が連載終了し、テレビアニメも佳境に差し掛かる今だからこそ、もっと他に描くべき展開があったのではないか。ホークスが常闇の援護に来るシーンは、唯一と言ってもいいくらい心に残った。そういった、原作・アニメを補完するような展開、今後もう見られないようなシーンなど、もっとあっても良かった。
作画については、基本的には通常のテレビアニメレベル。見せ場の戦闘シーンは相対的に力が入っているようには見えたが、チカチカと忙しない印象で、さほど効果的ではなかった。
味方側のオリジナルキャラクターについては、一定の魅力はあったように思うが、取って付けたようなバックグラウンド、展開ばかりで、深みはなかった。
同じ漫画原作アニメ映画でも、高い興行収入を記録するなど近年盛り上がりを見せる"1軍"の映画もあるが、それらとは見ている世界も立っているステージも違う。
少なくとも、それを理解して鑑賞すべき。
簡単に「ファンなら楽しめる!」とは言えない。